目次
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、看護・リハも知っておきたい溢水として、溢水の対応についてまとめていきたいと思います。
溢水と脱水
「溢水」は、正常範囲よりも身体の中に水分が溜まり、体液量が過剰になっている状態です。
一方、「脱水」は、正常範囲よりも体液量が減っている状態です。
通常は、水分のINとOUTは同程度になるのが健康的な状態ですが、溢水や脱水ではそのバランスが崩れます。
溢水では、INが増加する、もしくはOUTが減少する事で生じます。
その原因としては、主に過剰な補液(INの増大)や心不全や腎不全によるOUT量の減少などがあります。
脱水では、INが減るもしくはOUTが増える事で生じます。
その原因としては、水分摂取低下や下痢、嘔吐、熱傷、利尿薬投与などによるOUT量の増大などがあります。
溢水にどう対応するか
塩分・水分制限
体液量が過剰に多くなっている場合、対応としてまず考えられるものは塩分制限と水分制限です。
体液量はIN/OUTバランスで考えるため、排尿がしっかりとできているのであれば、INを減らす事で体液量の減少が見込めます。
減塩や水分制限の具体的な指示が出るので、それに合わせたケア・対応を取ることになります。
注意点としては、塩分・水分制限が指示として出ているにも関わらず、塩分の入っているものを取っている場合があります。
例を挙げると、ご飯にかけるふりかけやのりなどがあります。
間食をしていないかなどのチェックも必要な対応になります。
水分や塩分制限を行い、間食もしていないのに体液量が変化しない場合は、他の要因を考える必要があります。
例えば、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌が減少します。
甲状腺ホルモンが食物として摂取されたたんぱく質、脂肪、炭水化物は代謝され、体の組織を作る材料や体を動かすエネルギー源として利用されます。
甲状腺ホルモンにはこのような新陳代謝の過程を刺激し促進する作用があるのですが、分泌減少により新陳代謝が低下すると、浮腫の原因となります。
甲状腺機能低下症における浮腫は非圧痕性のため、判別のヒントになります。
浮腫が片側性の場合、深部静脈血栓症の可能性もあります。
深部静脈血栓症では、その周囲に炎症を生じ、血管壁の肥厚や周囲の弁不全により逆流を呈します。
そのため臨床上では組織の炎症所見やうっ血症状が出現します。
身体所見として、下肢の圧痕性浮腫、圧痛、側副静脈の表在化を確認します。
詳しくは以下の記事を参照してください。
深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)とホーマンズ徴候
深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)の臨床症状とアセスメントと注意点
血液データアセスメント-Dダイマーと静脈血栓塞栓症-
薬物療法
薬物療法は、塩分・水分制限でも改善されない場合や、心・腎不全よる体液量過剰への対応に用いられる事があります。
基本的には利尿薬が処方されます。
利尿薬は、尿量が少ない場合に加えて体液量過剰がある場合に用いられるものなので、普段からの体重チェックは欠かせません。
また、利尿薬使用においては血圧が安定しているかを把握しておく必要があります。
血圧の増減には心拍出量と抹消血管抵抗が関与します。
低血圧は上記2因子のどちらかが低い(少ない)、あるいは両方低い(少ない)事が考えられます。
心拍出量は循環血液量に影響を受けますが、利尿薬により体液量が低下するとさらに血圧低下につながる事があります。
そのため、普段からのバイタルサイン測定と経過の中での変化を確認していく事が重要になります。
血圧については以下の記事を参照してください。
血圧低下(起立性低血圧)やショックと下肢挙上-効果と限界を考える-
血圧測定で注意したい脈圧を知ることの意義
リハビリテーションとリスク管理-血圧が高い理由を考えるための基礎知識-
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