看護・リハも知っておきたい溢水-溢水の病態、メカニズムと評価-

                     
        
                   
        
                   
      
       

目次

心不全や腎不全、水・電解質異常についてのおすすめ記事

リスク管理のコツ

リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。

病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。

今回、看護・リハも知っておきたい溢水として、溢水の病態とメカニズム、評価についてまとめていきたいと思います。

溢水と脱水

「溢水」は、正常範囲よりも身体の中に水分が溜まり、体液量が過剰になっている状態です。

一方、「脱水」は、正常範囲よりも体液量が減っている状態です。

通常は、水分のINとOUTは同程度になるのが健康的な状態ですが、溢水や脱水ではそのバランスが崩れます。

溢水では、INが増加する、もしくはOUTが減少する事で生じます。

その原因としては、主に過剰な補液(INの増大)や心不全や腎不全によるOUT量の減少などがあります。

脱水では、INが減るもしくはOUTが増える事で生じます。

その原因としては、水分摂取低下や下痢、嘔吐、熱傷、利尿薬投与などによるOUT量の増大などがあります。

溢水と体液量過剰、体重との関係

人間の水分量

人間は構成要素のうち60%が水分でできています。

そのうち2/3が細胞内液で、1/3が細胞外液となっています。

細胞外液のうち3/4が間質に存在し、1/4が血管内に存在します。

体液量過剰と体重

溢水は、正常範囲よりも身体の中に水分が溜まり、体液量が過剰になっている状態ですが、この状態を把握するためには、体重測定が重要です。

体重増加は心不全や腎不全の増悪兆候として重要な指標でした。

心不全というのは、上・下大静脈から右心房に戻ってくる血液量が十分であるにもかかわらず、心臓が全身の組織の代謝の必要に応じて適当かつ十分な血液を駆出できない状態と言えます。

心臓の機能低下によって体重が増加するのは、心不全の兆しの大事な手がかりになります。

よく言われているのは、1週間で2kg以上の増加がある場合には要注意です。

心臓の機能低下により血液を全身に送り出す能力が低下すると、心臓から前方へ血液が進みにくくなり、心臓の後方(血液を受け入れる)では血液のうっ滞が生じます。

これを後方障害と呼びます。

なお、前方障害は心拍出量が減ることにより、筋肉に血液が行き渡らなくなり、疲れやすさや気だるさなどの症状が出現します。

心不全の増悪において体重を指標とするのは、尿量測定よりも水分のIN・OUTの結果がはっきりと出るためです。

腎不全において、腎臓の機能が低下すると、ろ過機能の低下から、過剰な水分を排出することが難しくなります。

これが、浮腫や体重増加の原因となります。

そのため、腎不全がある方の場合、体重測定を毎日、朝食前に行うことが理想的です。

その際、体重増加が1日に1-2kg以上ある場合は増悪兆候となるので注意が必要になります。

体重測定の重要性

前途したように、体重測定は重要性は理解できたと思いますが、体重は普段(調子の良い時)の数値を把握する事が大切です。

また、入院時の体重から入院経過の中での増減をみる事で、治療内容や効果の判定に用います。

体液量過剰を疑う際にみる指標(評価項目)

体液量過剰を疑う際には、体重の他にも、

・下肢の圧痕性浮腫
・胸水
・腹水
・頸静脈怒張

なども参考にする事ができます。

圧痕性浮腫とは、浮腫により腫脹しており圧痕が残るものをさします。

非圧痕性浮腫とは、浮腫により腫脹しているが圧痕が残らないものをさします。

前途しましたが、腎疾患(ネフローゼ症候群,腎不全,急性糸球体腎炎)、肝硬変、心不全、静脈性(上・下大静脈症候群、四肢静脈血栓症、静脈瘤)、炎症性(炎症、血管炎 )は圧痕性浮腫になります。

非圧痕性浮腫としては、リンパ性、血管神経浮腫(クインケ浮腫)、 甲状腺機能低下症(粘液水腫)などがあります。

頸静脈怒張のアセスメントの簡便な行い方としては、内頸静脈が座位や立位において怒張することですが、観察上は「皮膚の揺れ」として認識できます。

正確なアセスメントとしては、45度の半座位とし、胸骨角から床に垂直に定規を立てて、頸静脈怒張の上端(拍動の位置)までの高さを測定します。

異常な場合は、4cmを超えた場合で、原因としてはうっ血性心不全や心タンポナーデなどが考えられます。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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