目次
糖尿病についてのおすすめ記事
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- 糖尿病とリスク管理-合併症が生じるしくみ-
- 糖尿病とリスク管理-糖尿病性昏睡と高浸透圧高血糖状態-
- 糖尿病とリスク管理-糖尿病性昏睡と糖尿病性ケトアシドーシス-
- 糖尿病とリスク管理-インスリン分泌低下とインスリン抵抗性-
- リスク管理に活かす糖尿病の基礎知識-糖尿病、糖代謝異常の分類-
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- 看護・リハも知っておきたい糖尿病-インスリン自己注射のポイント-
- 看護・リハも知っておきたい糖尿病と運動療法-日常生活で運動療法を行う方法-
- 看護・リハも知っておきたい糖尿病-運動療法指導のポイント-
- 看護・リハも知っておきたい糖尿病-シックデイの対応方法-
- 看護・リハも知っておきたい糖尿病-感染症にかかりやすくなる理由-
リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、看護・リハも知っておきたい糖尿病として、シックデイの対応方法についてまとめていきたいと思います。
糖尿病とは
1型糖尿病と2型糖尿病
1型糖尿病は、自己免疫や遺伝子などにより膵臓にあるランゲルハンス島β細胞の破壊によって、インスリン分泌がされなくなることによって生じます。
一方、2型糖尿病は、遺伝因子や生活習慣によって、インスリンの分泌が低下したり、インスリン抵抗性といった2つの要因によって生じます。
インスリン分泌低下
インスリンは血糖値を下降させる働きがあります。
インスリンの分泌が低下する原因としては、加齢によるもの、体質(遺伝)によるなどがあります。
インスリンの分泌が低下するため、血糖値は上昇している状態にあります。
例えるならば、膵臓のランゲルハンス島β細胞は、インスリン製造工場であり、経年劣化により製造効率が低下し商品(インスリン)の生産能力が低くなっている状態になります。
インスリン抵抗性
インスリン抵抗性というのは簡単に説明すると、インスリンが分泌されたとしても、そのインスリンに抵抗して、糖が取り込めなくなる状態です。
生活習慣として、暴飲暴食や運動不足などにより、肝臓や筋肉、脂肪でインスリンが作用しにくくなり(抵抗性)、過剰な血液内の糖を取り込めなくなり、高血糖の状態になります。
インスリンによる糖の取り組み作用のメカニズム
正常な状態では、インスリンが細胞の受容体に結合することで、「GLUT4」と呼ばれるグルコース輸送体が働き、細胞内に糖を取り込みます。
一方、インスリン抵抗性が亢進している状態では、インスリンの作用が減弱し、細胞内に糖を取り込みにくくなり、結果として高血糖状態が持続します。
シックデイとは
糖尿病の方は、ウィルスなどに対する抵抗力が低下しているため、さまざまな感染症にかかりやすいと言われています。
糖尿病の方が、感染症にかかり、熱が出る・下痢をする・吐く、また食欲不振によって、食事ができないときのことを『シックデイ』(体調の悪い日)と言います。
このような状態では、インスリン製剤を普段使用する必要のない血糖コントロールが日頃は良好な方でも、著しい高血糖になり、たいへん重い状態になることがあります。
1型糖尿病などでインスリン製剤の使用が必須の方では、さらに高血糖になりやすく、注意が必要です。
また、体調が悪いことで食事ができずに低血糖になる可能性もあり、血糖値の確認が大切です。
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/060/06.html
シックデイによって体調を崩すと、食事による高血糖だけではなく、脱水による高血糖も考慮しなければなりません。
脱水状態は体内の水分が少なくなっているため、それだけ血液が濃くなるので、血糖値も高くなります。
シックデイにおける対応方法
シックデイの際には、
・保温と安静
・食事や水分の摂取
・血糖値や体温チェック
・インスリン注射中止の自己判断はしない
・主治医への連絡
は基本対応になります。
水分摂取は重要で、スポーツドリンクなどで水分とミネラルをバランス良く摂取できる様に心がけます。
水分摂取量を確保するために、食事時間だけでなく、間の時間にこまめに水分を取るように心がけます。
食事では消化の良いもの(おかゆ、ヨーグルト、スープなど)を食べるようにします。
血糖値のチェックでは毎回の食事前や就寝前に行うようにします。
インスリン注射や内服薬の調整が必要なため、早めの病院受信が必要になります。
高熱が続いたり、消化器症状が強い、血糖値350mg/dℓ以上が続く場合は、受診が必要です。
血糖値に応じたインスリン注射の単位設定を行うために医師への相談が必要になります。
シックデイと高浸透圧高血糖状態
糖尿病では、高浸透圧高血糖状態と呼ばれるものがあり、これは脱水が引き金となることがあります。
2型糖尿病では、インスリンは不足状態にありますが、血糖値が上昇します。
糖は腎臓で再吸収されるのですが、血糖値が160-180mg/dl以上になると、処理能力を上回るため、糖が尿に排出されるようになります。
すると、尿の浸透圧は上昇します。
尿管を通る濃い尿は、水分をたくさん引っ張るので、尿量が増加します(浸透圧利尿)。
浸透圧利尿では脱水状態に陥りやすく、血液の濃縮が進みさらに高血糖状態になります。
また、手術などの侵襲で炎症による発熱があったり、代謝亢進によっても脱水状態に陥りやすくなります。
高度な脱水により中枢神経障害が生じ、意識障害やけいれんが出現します。
これが、高浸透圧高血糖状態による糖尿病性昏睡のメカニズムになります。
高浸透圧高血糖状態は、高齢者では水分摂取量の低下や発熱なども重なり、脱水の起こしやすさがあるため注意が必要になります。
脱水予防としてスポーツドリンクは勧められますが、食事摂取ができる様になれば、糖分が含まれているものは控えるようにする必要があります。
シックデイと内服薬
シックデイでは、内服薬によっては中止する必要があります。
例えば、メトホルミンは重度感染症や下痢などの脱水時に乳酸アシドーシスを生じさせることがあります。
また、SGLT阻害薬は、ブドウ糖を尿糖として排泄する作用があるため、水分摂取ができていない状態では、脱水を起こし易い状態になります。
これらの様に、内服薬については医師と相談が必要になります。
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