目次
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
さらに、医者の治療方針や治療内容を理解することで、病態理解につながり、リスク管理を行いやすくなります。
今回、心不全治療としてのNPPVの目的と役割についてまとめていきたいと思います。
心不全について
心不全は、以下のように定義されています。
なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
これはどういうことかと言うと、「心臓のポンプ機能」、すなわち血液を送り出す働きと血液を受け取る働きがなんらかの原因で破綻することで起こります。
これにより、全身組織に必要な血液量(心拍出量)を送り出すことができない状態に陥ります。
NPPVの概要、目的と役割
NPPVの概要と目的
NPPV(Non invasive Positive Pressure Ventilation)とは、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法です。
同じ換気を行う治療法には人工呼吸器がありますが、人工呼吸器は気管切開を行います。
推奨度の強いものとして、急性疾患では、
・心原性肺水腫
・COPD急性不全
・免疫不全に合併した呼吸不全
などがあります。
慢性疾患では、
・肥満低換気症候群
・睡眠時無呼吸症候群
などがあります。
NPPVの役割(静脈還流の減少)
NPPVは、気道に陽圧をかけることで換気を補助してくれる装置です。
自然呼吸では、胸腔内圧は陰圧となっています。
NPPVを使用すると、肺に内側から空気を送り込む(肺胞を強制的に膨らませる)ため、胸腔内圧は陽圧になる部分が生じます。
胸腔内圧が陽圧になると、両方の肺の間にある心臓や大血管は圧迫されます。
大静脈が圧迫されることにより、静脈韓流が減少します。
ここで、静脈還流に関連する、心拍出量に影響を与える要因について確認しておきます。
前負荷
前負荷とは、収縮直前の状態で加えられる負荷のことで、拡張末期の壁応力を指します。
すなわち、収縮開始前に心臓にかかる負荷で、全身から心臓に戻る血液量で表されます。
前負荷を表す指標として、心室拡張末期容積、心室拡張末期圧、右房圧があります。
全身から心臓に戻る血液量が多くなればなるほど、心臓には負担がかかっているという事を示しています。
前負荷に影響を与える因子を以下に挙げます。
•循環血液量
減少:出血、脱水
増加:輸液過剰、腎不全、塩分過剰摂取など
•体内血液分布
体静脈トーヌス(交感神経緊張)
•静脈潅流量
骨格筋ポンプ(運動)、胸腔内圧(呼吸)
•左室コンプライアンス
心室壁特性(肥大、線維化、虚血)
心膜疾患(心タンポナーデ、収縮性心膜炎)
右室の影響
後負荷
後負荷とは、心筋短縮(血液駆出)開始後に心筋にかかる負荷の事を指します。
心臓から血液が拍出される際に、抵抗が大きくなると負荷になります。
後負荷に影響を与える因子を以下に挙げます。
•末梢血管抵抗
交感神経緊張、高血圧症、血管拡張薬
•動脈コンプライアンス
加齢、人工血管
•大動脈部分狭窄
大動脈弁狭窄、大動脈縮窄
•血液粘稠度
ヘマトクリット上昇
•胸腔内圧
心室壁の貫壁圧を下げる
心不全とNPPV
静脈還流の減少は、心臓においては、後負荷を減少させます。
胸腔内圧上昇により、左心室の収縮にかかる圧力が低下します。
すると、左心室の後負荷を相対的に軽減します。
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