目次
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、看護・リハも知っておきたいカリウム異常として、低カリウム血症の特徴、症状と治療についてまとめていきたいと思います。
カリウムはどこに存在するか
体内のカリウムの総量は、50~55mEq/kg体重と言われています。
カリウムの98%以上が細胞内に存在します。
なお、カリウム含有量の多い臓器は骨格筋、赤血球、肝臓と言われています。
残り1~2 %が細胞外液中に存在します。
この細胞内外のカリウムの濃度勾配は、細胞内負の細胞膜電位を形成し、神経・筋細胞では興奮・収縮に、上皮細胞では細胞膜を介したイオン輸送の役割があります。
低カリウム血症の概要
低カリウム血症とは、血清カリウム濃度が 3.5mEq/L 以下の状態です。
原因としては、
・偽性低カリウム血症
・細胞内へのカリウムの移動
・カリウム欠乏(カリウム摂取不足、カリウムの消化管または腎臓からの喪失)
などがあります。
体重管理の目的でループ利尿薬を用いている場合、尿中のカリウム排泄を増加させるため、低カリウム血症が生じやすくなります。
原発性アルドステロン症では、副腎からアルドステロンが過剰分泌されるため、高血圧や低カリウム血症が生じやすくなります。
アルドステロンはナトリウムを体内に貯蔵し、カリウムを体外に排出する働きがあります。
アルドステロンが過剰分泌されると、腎臓においてナトリウムが尿に排出しにくくなるために体内に貯留し、血管の中にナトリウムとともに水分も増加して血圧が高くなります。
低カリウム血症の症状
カリウムが欠乏すると、
・脱力、筋力低下、テタニーなどの骨格筋症状
・嘔吐、便秘、麻痺性イレウスなどの消化器症状
・糖代謝異常
・腎肥大
・多尿
・心電図におけるT波の平低化または陰性化、U波の増高など
が出現します。
低カリウム血症に対する治療
低カリウム血症に対しては、まずは経口摂取で対応できないかを考えます。
カリウム製剤であるアスパラギン酸カリウム、グルコン酸カリウム、塩化カリウムなどがあり、これらはカリウム含有量が異なるため、対象者に応じた処方がなされます。
カリウムを経口摂取できない場合、静脈注射が検討されます。
カリウムの静脈注射は、急速に行うと心停止に至るため、投与速度に注意が必要になります。
また、カリウム製剤の静脈注射では静脈炎が生じやすくなるので観察項目として重要になります。
尿の排泄が多くなっている場合、カリウムを補充しても血清カリウム濃度の急激な上昇は抑えられます。
しかし、尿が出にくい(少ない)場合、細胞内のカリウムが飽和し、カリウムが細胞内に入れないために血清カリウム濃度が急激に上昇します。
そのため、定期的な採血により血清カリウム濃度の確認が必要になります。
体格の小さい方は筋肉量が乏しく、血清カリウム濃度が上昇しやすくなります。
低カリウム血症が影響を与える疾患
肝硬変では、低カリウム血症ではアンモニア産生が増えるため、肝性脳症が悪化する事があります。
低カリウム血症では水素イオンが細胞内に移動するため細胞内アシドーシスとなり、酸塩基平衡を保つためにグルタミンからアンモニアと重炭酸塩が産生されるため、血中アンモニア値が増加するため悪化要因となります。
心疾患では低カリウム血症により不整脈を起こしやすいため注意が必要です。
ジギタリス製剤を内服しているアタでは、低カリウム血症によりジギタリス中毒(嘔吐、食欲不振、精神神経症状など)を起こす事があります。
ジギタリス製剤とは、心不全や心房細動、頻脈の治療に用いられる薬剤です。
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