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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
患者様に起立性低血圧やショックが生じると、下肢挙上法をまずは行うと思います。
今回、血圧低下(起立性低血圧)やショックと下肢挙上として、効果と限界を考えていきたいと思います。
起立性低血とは
起立性低血圧は、立位をとった時に生じる血圧低下です。
定義としては、20mmHgを上回る収縮期血圧の低下、10mmHgを上回る拡張期血圧の低下となっています。
脳に十分血液が届かなくなると、たちくらみや失神が生じることがあります。
リハビリテーション場面などで、臥位から座位、座位から立位などを取った際に起立性低血圧が生じることが多いため、血圧のモニタリングを適宜行って行くことが求められます。
ショックとは
生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。 収縮期血圧90mmHg以下の低下を指標とすることが多い。 典型的には交感神経系の緊張により,頻脈,顔面蒼白,冷汗などの症状をともなう。
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0823.html
ショックの分類としては4つ挙げられます。
・循環血液量減少性ショック
・血液分布異常性ショック
・心原性ショック
・心外閉塞・拘束性ショック
循環血液量減少性ショックは、出血による体液喪失や脱水、腹膜炎などが原因になります。
血液分布異常性ショックはアナフィラキシー、脊髄損傷、敗血症などが原因になります。
心原性ショックは、心筋梗塞、弁膜症、重症不整脈、心筋症、心膜炎などが原因になります。
心外閉塞・拘束性ショックは、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などが原因になります。
ショックには5徴候があります。
・蒼白
・虚脱
・冷汗
・脈拍触知不可
・呼吸不全
これらを指標としながら、ショックがあるかどうかをアセスメントする必要があります。
下肢挙上法の効果
血圧低下やショックが生じた場合にまず考えないといけないことは、同時に脳血流量も低下してしまうということです。
脳血流が維持できない場合、脳へのダメージが大きくなってしまいます。
下肢挙上法は、一時的ではありますが循環血液量を保つことが可能になります。
下肢の静脈内の血液量は150-200mℓとされており、下肢挙上により血液が心臓に戻ります。
すると、前負荷が増加します。
前負荷とは、収縮直前の状態で加えられる負荷のことで、拡張末期の壁応力を指します。
すなわち、収縮開始前に心臓にかかる負荷で、全身から心臓に戻る血液量で表されます。
下肢挙上により、一時的に輸液負荷を行なったのと同じような効果を得ることができます。
これは、昇圧剤での静脈収縮による前負荷増加→血圧上昇のメカニズムと同じです。
下肢挙上法の限界と禁忌
下肢挙上法は一時的な効果であることを知っておく必要があります。
下肢挙上により心拍数、平均動脈圧、心係数、1回拍出量改善の可能性がありますが、その効果は7分未満だとされています(JRC蘇生ガイドライン)。
なお、下肢挙上角度については明確な結論は出ていません。
下肢挙上法の禁忌としては、以下のものがあります。
・うっ血性心不全、急性左心不全
・頭部外傷
・肥満
うっ血性心不全、急性左心不全では下肢挙上により前負荷が大きくなり、心臓の仕事量が増加するため心不全増悪につながることがあります。
頭部外傷では、頭蓋内圧上昇や脳浮腫の増大につながることがあります。
肥満では、横隔膜挙上により肺尖部に血液が移動することで換気不全につながることがあります。
ただし、脳血流維持を目的とする場合には下肢挙上を行うこともあります。
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