目次
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
また、対象者がどのような薬物療法を実施しているかを知ることにより、その作用から考えられる症状把握が行えます。
今回、心不全と利尿薬として、低カリウム血症と不整脈の関係性についてまとめていきたいと思います。
心不全について
心不全は、以下のように定義されています。
なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
これはどういうことかと言うと、「心臓のポンプ機能」、すなわち血液を送り出す働きと血液を受け取る働きがなんらかの原因で破綻することで起こります。
これにより、全身組織に必要な血液量(心拍出量)を送り出すことができない状態に陥ります。
利尿薬の種類と特徴
(1)サイアザイド系利尿薬
遠位尿細管でのNa+/Cl–共輸送体を阻害し、Na+再吸収を抑制します。また、遠位尿細管でのNa+-Ca2+交換が阻害されるため、Ca2+の保持に働きます。利尿薬の中では強い降圧効果を有しますが、低カリウム血症や糖、脂質、尿酸の代謝に注意が必要です。腎機能低下時の効果は乏しく、慢性腎不全患者ではあまり使えません。
(2)ループ利尿薬
ヘンレ係蹄上行脚のNa+/K+/2Cl–共輸送体を阻害し、Na+とK+の再吸収を抑制します。これに伴い、尿細管細胞間を通してCa2+とMg2+の再吸収も抑制されます。サイアザイド系利尿薬と異なり、腎血流量や糸球体濾過率の減少に影響を与えないため、腎障害合併高血圧患者に使用可能です。
(3)カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬
アルドステロン拮抗薬および上皮細胞Naチャネル(ENaC)を抑制するカリウム保持性利尿薬(トリアムテレン)は、いずれもK+排泄への影響を与えずにNa+排泄が可能であることから低カリウム血症に対する懸念がありません。しかし、降圧作用は3種のうち最も弱いとされています。
https://pharma-navi.bayer.jp/adalat/pharmacist/basic/03/t27
この中で、今回のテーマである低いカリウム血症について、関係が深いものはループ利尿薬です。
ループ利尿薬は、ヘレンループに作用して、尿の濃縮機能を抑制して利尿に作用するので、カリウムが排泄されることにより低カリウム血症が生じやすくなります。
低カリウム血症と不整脈
通常、カリウムは細胞内の濃度が高いのですが、常に細胞内→外に移動し、細胞内の電位を下げています。
正常な状態では、ナトリウムイオンが細胞内に流入し、カリウムイオンが細胞外に流出します。
細胞内外のナトリウムイオンとカリウムイオンの電位差により電気刺激が発生し、心筋が興奮して収縮が生じます。
低カリウム血症では、細胞外にカリウムが少ない状態であり、心筋細胞外へカリウムが流出しやすい状態です。
この状態は電気刺激のスイッチが入りやすい状態であり、異所性に心筋に刺激が生じやすくなることから、不整脈が生じやすくなります。
血清カリウム濃度と危険性についてまとめていきます。
3.5以下:低カリウム血症、要注意
3.6~5.4:安全
5.5~5.9:やや注意
6.0~6.4:要注意
6.5~6.9:危険性
7.0以上:心停止の危険高まる
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