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リハビリテーションと循環器疾患
リハビリテーションの対象者には、循環器疾患を合併している方も多く存在します。
中でも遭遇する頻度が高いのが「心不全」です。
心不全の急性増悪兆候としては、
・下腿浮腫
・体重増加
・運動耐容能低下
・全身倦怠感
・食欲不振
・夜間頻尿
・尿量減少
などがあります。
上記にあるように、心不全では下腿浮腫が見られます。
では、なぜ心不全では下腿浮腫が見られやすいのかを、今回は考えていきたいと思います。
心不全と浮腫
まず、心不全においてなぜ浮腫が出現するのかを考えていきます。
心不全というのは、上・下大静脈から右心房に戻ってくる血液量が十分であるにもかかわらず、心臓が全身の組織の代謝の必要に応じて適当かつ十分な血液を駆出できない状態です。
つまり、全身に血液がうまく行き渡らないということになります。
肺に十分な血液を送り込めない状態になるのですが、これを「うっ血」と呼びます。
これは、例えるならば血液の交通渋滞が生じているようなものです。
この状態では右の心臓に負荷がかかるので、肺の手前にある下腿の血管周辺にも負荷がかかります。
心臓から十分な血液を送り出せないことにより、腎臓に流れる血液も少なくなることから、尿の量が減り、貯まった水分を排泄できないことで浮腫が出現します。
心不全と下腿浮腫の関係性を詳しく考える
心不全と下腿浮腫を考える際には「静水圧」という概念を知っておく必要があります。
「せいすいあつ」と読みます。
静水圧とは、静止している液体の中の任意の面に作用する圧力のことです。
血管内においては、「血管の水分が血管の外に押し出そうとする力」ということになります。
心臓から出た大動脈は段々と枝分かれし、毛細血管と呼ばれる細い血管となって体中の細胞に酸素や栄養を送ります。
http://uwa-utsunomiya-cl.jp/news/?p=227
この血管にも血圧がかかっています(静水圧と呼びます)ので、血管の中の水分が外に滲み出ようとします。
しかし、これとは反対に血管の中にはたくさんのタンパク質があって、浸透圧の作用によって血管の中に水分をとどめようとします。
健康な場合はこの力が等しい(静水圧=浸透圧)ために、むくみは生じませんが、このバランスが崩れるとむくみが生じます。
心不全があると、血流がうっ滞し(血液の交通渋滞)、静水圧の圧力が非常に高い状態になります。
すると、静水圧と浸透圧のバランスが崩れます(静水圧>浸透圧)。
静水圧は心臓から遠い場所ほど、その圧力が高くなるため、心臓から遠い下肢に浮腫が生じやすくなります。
このようなメカニズムにより心不全により下腿浮腫が生じます。
臨床では、心不全=下腿浮腫と覚えておくのはもちろんですが、メカニズムを理解することによりさらに心不全の病態を理解しやすくなります。
なお、腎不全では顔の浮腫が生じやすいので、その辺りを心不全/腎不全のどちらの影響が出ているのかという、一つの目安にすると良いと思われます。
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