心不全と夜間発作性呼吸困難-なぜ起座呼吸になるのか-

                     
        
                   
        
                   
      
       

目次

心不全についてのおすすめ記事

リスク管理のコツ

リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。

病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。

今回、心不全と夜間発作性呼吸困難として、なぜ起座呼吸になるのかについてまとめていきたいと思います。

心不全とは

心不全は、以下のように定義されています。

なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

これはどういうことかと言うと、「心臓のポンプ機能」、すなわち血液を送り出す働きと血液を受け取る働きがなんらかの原因で破綻することで起こります。

これにより、全身組織に必要な血液量(心拍出量)を送り出すことができない状態に陥ります。

心不全の原因

心不全の原因は、

・心筋の異常によるもの
・血行動態の異常によるもの
・不整脈によるもの

に分けることができます。

心筋の異常によるもの

心筋の異常によるものとしては、虚血性心疾患、心筋症、心毒性物質、心肺炎などがあります。

血行動態の異常によるもの

血行動態の異常によるものとしては、高血圧症、弁膜症や心臓の異常構造、心内・外膜の異常、体液量増加などがあります。

不整脈によるもの

不整脈も、心不全の原因になります。

心不全の種類(右心不全、左心不全、両心不全)

心不全の分類

左心不全は、左心系の循環不全によるものです。

右心不全は、右心系の循環不全によるものです。

両心不全は、両方が並存するものです。

LVEF(左室の収縮能を示す指標)による分類もあります。

自覚症状と心不全

自覚症状から心不全の程度を示すのとして、NYHA分類(New York Heart Association functional classification)があります。

NYHA分類とは身体活動による自覚症状の程度により、心疾患の重症度を分類したもので、心不全における重症度分類として広く用いられています。

Ⅰ度:心疾患はあるが、普通の身体活動では症状がない(無症状)。
Ⅱ度:普通の身体活動(坂道や階段をのぼるなど)で症状がある(階段昇降で症状出現)。
Ⅲ度:普通以下の身体活動(平地を歩くなど)でも症状がある(平地歩行で症状出現)。
Ⅳ度:安静にしていても、心不全の症状や狭心痛がある(安静時から症状出現)。

詳しくは以下の記事を参照してください。

うっ血が生じる仕組み

左心不全

左心不全では、以下のメカニズムにより各種症状が出現します。

・左心拍出量低下による前方障害(抹消循環不全)

・残血量増加(出しきれない血液が左室内に残る)

・左室拡大し、後方障害も起こる

・左房圧上昇(左房から血液を送れない)

・肺静脈圧上昇(逆行性に肺静脈にも圧がかかる)

・肺毛細血管圧上昇

・肺うっ血

・肺水腫

これが、肺循環系のうっ滞です。

右心不全

右心不全では、以下のメカニズムにより各種症状が出現します。

・右心拍出量低下

・残血量増加

・右室拡大し、後方障害も起こる

・右房圧上昇(右房から血液を送れない)

・体循環系の拡張と圧上昇(逆行性に体循環系に圧が伝わる)

・全身うっ血

・全身浮腫(肺を除く。胸水貯留はみられる)

これが体循環系のうっ滞です。

両心不全

左心不全があると、右心系に影響し、右心不全を起こす可能性が高まります。

心不全の症状

うっ血によるもの

左心不全では、初期の安静時には無症状で、労作時に息切れや動悸、易疲労性が生じます。

重症化すると、夜間発作性呼吸困難や起座呼吸が生じます。

右心不全では便秘、悪心・嘔吐、腹部膨満感、下腿・大腿浮腫、体重増加などが生じます。

低心拍出量によるもの

低心拍出量による症状としては、意識障害、不穏や記銘力低下が生じます。

夜間発作性呼吸困難

夜間、就寝している時は、機能低下している心臓に多くの血液が戻ります(静脈還流の増加)。

すると肺うっ血が増悪し、呼吸困難が生じやすくなります。

これが、夜間発作性呼吸困難が生じるメカニズムです。

起座呼吸

夜間発作性呼吸困難が生じた際に、起座呼吸により呼吸困難を軽減させようとします。

これは、起き上がることで、静脈還流が低下し、肺うっ血が軽減することで呼吸困難が軽減されるためです。

心不全症状としての呼吸困難がある場合、しんどいからと言って無理に臥床させようとしないことがポイントになります。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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