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リハビリテーションと栄養
近年、リハビリテーションにいては、栄養チームが作られるなど、栄養士の積極的な介入も行われています。
それだけ栄養状態が回復への影響を持っており、栄養状態をいかに良好に保つかが、リハビリテーションの効果を最大限にするために必要なことになっています。
今回のテーマである「悪液質」ですが、あまり聞きなれない概念かと思います。
しかし、リハビリテーションと栄養を考える上では押さえておきたい概念なので、整理していきたいと思います。
悪液質とは
悪液質は炎症を伴う疾患関連性の低栄養で、骨格筋量の低下をもたらす代表的な病態です。
がんや慢性心不全、慢性腎不全、自己免疫疾患などの慢性疾患を背景とした低栄養状態であり、骨格筋量の低下を特徴としています。
骨格筋量の低下はADLの低下や転倒などに繋がることから、活動面だけでなく参加面にも影響し、QOL低下に繋がってしまうことも考えられます。
骨格筋量の低下としては「サルコペニア」という概念は聞いたことがあると思います。
悪液質では、慢性疾患によって続発性にサルコペニアを生じているようなイメージと捉えると理解しやすいと思います。
悪液質はどのような状態か
悪液質には診断基準があります。
Evansら(2008)によると、
①筋力低下
②疲労感
③食欲不振
④除脂肪体重低値
⑤生化学データの異常値
・炎症反応高値
・貧血
・低アルブミン血症
が見られるとされています。
リハビリテーション療法士が日常的によく遭遇する疾患において、
・慢性心不全:16~42%
・慢性腎不全:30~60%
・慢性閉塞性肺疾患:27~35%
悪液質が見られるとされています。
アナボリックレジスタンスについて
カタボリックとアナボリックという概念を聞いたことはあるでしょうか。
カタボリックとは、体内のアミノ酸を増やすために筋肉が分解される現象のことです。
アナボリックは、その逆で、筋肉が合成される現象です。
アナボリックレジスタンスとは、アナボリックに対する抵抗性がある状態です。
すなわち、筋肉が合成されにくいということになります。
手術や外傷などの急性疾患,種々の慢性消耗性疾患,加齢,運動不足,副腎皮質ステロイド投与などの要因により,アミノ酸を含めた栄養素の摂取後,筋組織での蛋白合成が正常に行われなくなる同化の抵抗性を呼ぶ。
https://www.aichi.med.or.jp/webcms/wp-content/uploads/2020/12/67_2_p74-79.pdf
多くの場合,悪液質患者は基礎疾患による慢性炎症に加え,加齢や不動といった要因が加わり,アナボリックレジスタンスが高い状態にある。
基礎疾患が増悪すると,炎症反応や代謝異常も高度になり,アナボリックレジスタンスもより高度となる。
高齢者は様々な基礎疾患を有していることから、筋肉が合成されにくい状態であると言えます。
悪液質に対して、どのような対策を行うか
悪液質に対しては、悪液質をを引き起こす可能性のある疾患を合併している場合、悪液質の状態になる前から対策をしておく事が必要になります。
悪液質の状態になる前から、対象者の栄養状態を把握し、栄養摂取を促したり運動処方により骨格筋量低下を防いでおくことが大切です。
リハビリテーションでは、栄養状態にもよりますが、栄養摂取の不足が解消されている場合であれば積極的な運動処方を行います。
悪液質が進んだ段階での運動療法の有用性の検証はされていないため,十分な栄養摂取量が確保できない状態や,代謝障害が高度となった段階では,過度な運動は消耗につながる可能性もあり,注意を要する
https://www.aichi.med.or.jp/webcms/wp-content/uploads/2020/12/67_2_p74-79.pdf
このようなことから、栄養状態の評価をしっかりと行った上で、適切な運動内容(運動強度、運動時間、運動頻度)を検討することが大事なポイントになります。
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