目次
糖尿病についてのおすすめ記事
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、看護・リハも知っておきたい糖尿病として、インスリン自己注射のポイントについてまとめていきたいと思います。
糖尿病とは
1型糖尿病と2型糖尿病
1型糖尿病は、自己免疫や遺伝子などにより膵臓にあるランゲルハンス島β細胞の破壊によって、インスリン分泌がされなくなることによって生じます。
一方、2型糖尿病は、遺伝因子や生活習慣によって、インスリンの分泌が低下したり、インスリン抵抗性といった2つの要因によって生じます。
インスリン分泌低下
インスリンは血糖値を下降させる働きがあります。
インスリンの分泌が低下する原因としては、加齢によるもの、体質(遺伝)によるなどがあります。
インスリンの分泌が低下するため、血糖値は上昇している状態にあります。
例えるならば、膵臓のランゲルハンス島β細胞は、インスリン製造工場であり、経年劣化により製造効率が低下し商品(インスリン)の生産能力が低くなっている状態になります。
インスリン抵抗性
インスリン抵抗性というのは簡単に説明すると、インスリンが分泌されたとしても、そのインスリンに抵抗して、糖が取り込めなくなる状態です。
生活習慣として、暴飲暴食や運動不足などにより、肝臓や筋肉、脂肪でインスリンが作用しにくくなり(抵抗性)、過剰な血液内の糖を取り込めなくなり、高血糖の状態になります。
インスリンによる糖の取り組み作用のメカニズム
正常な状態では、インスリンが細胞の受容体に結合することで、「GLUT4」と呼ばれるグルコース輸送体が働き、細胞内に糖を取り込みます。
一方、インスリン抵抗性が亢進している状態では、インスリンの作用が減弱し、細胞内に糖を取り込みにくくなり、結果として高血糖状態が持続します。
糖尿病と注射薬
糖尿病は、高血糖が持続する状態ですが、血糖値を下げる薬には、飲み薬(経口薬)と、注射薬の2種類があります。
注射薬には、主に
・GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬
・インスリン製剤
の、2種類があります。
GLP-1受容体作動薬は身体からインスリンを出しやすくする作用があります。
インスリン製剤はインスリンそのものを補充する注射薬です。
GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬
GLP−1受容体作動薬は、主に膵臓に作用してインスリンの分泌を促す作用を持つ2型糖尿病の注射薬です。
「GLP-1」は、インクレチンというホルモンのひとつで、食事摂取などが刺激となり、消化管から分泌されるホルモンです。
GLP-1は体の中のGLP-1受容体に作用し、 膵臓からインスリンの分泌を促す 膵臓のグルカゴンというホルモンを抑え、血糖値を上がりにくくする 胃や消化管の動きを遅くし、ゆっくりと消化させる 脳に働きかけ、食欲を抑える
という働きで血糖コントロールを良くします。
一方で、GLP-1はからだの中でDPP-4(ディーピーピーフォー)という酵素によって短時間で分解されるため、その作用は直ぐに消えてしまいます。
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/030/03.html
インスリン製剤
インスリン製剤は、インスリンそのものを外から補う注射薬です。
自分の膵臓から必要なインスリンを十分に出せない方は、インスリン製剤で外から補う必要があり、1)インスリン製剤による治療(インスリン治療)が必須な場合と、2)インスリン治療があったほうが望ましい場合があります。
1)インスリン治療が必須な場合
自分自身によるインスリン分泌がほとんどなく、生きていくためにインスリンの補充が必須となる方
高血糖が理由でこん睡になっているとき 重い肝臓の障害、腎臓の障害を合併しているとき
重い感染症や外傷がある、中等度以上の外科手術を行うとき
糖尿病合併妊婦、また妊娠糖尿病の方で食事療法だけでは血糖コントロールが不十分な方2)インスリン治療が望ましい場合
インスリンが十分に出ないため、血糖値を適正な範囲に保つためにインスリンが必要となる方
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/030/03.html
血糖値を下げる飲み薬だけでは血糖を適正な範囲に保つことが難しいとき
やせ型で栄養状態が低下しているとき
糖尿病以外の病気で、血糖値が上がる治療薬を使用しているとき
緩徐進行1型糖尿病の方
自己注射における注意点
インスリンボール
インスリンボールは、皮膚の下にできる硬結の事を指します。
自己注射を同じ場所に繰り返して行うと、皮膚が硬くなってしまいます。
すると、インスリンを打ってもその吸収が悪くなることが多くなります。
そのような場合、同じ部位だったとしても、2-3cmずつずらして注射することでインスリンボール形成を防ぐことが可能です。
インスリン注射を打つ場所としては、手術痕や臍部を避けるようにします。
インスリンの吸収と注射部位
インスリン注射の吸収が早い部位としては、以下の順になります。
①腹部
②上腕
③臀部
④大腿部
これらの中でも、吸収が最も安定するのは腹部であることから、インスリン自己注射は腹部に打つことが多くなります。
上腕や大腿部は、運動・活動量によって吸収速度に変化が生じやすい事を把握しておいてもらうようにする事が大切です。
上腕や大腿部は、主にはローテーションとして打つようにする事が多いです。
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