看護・リハも知っておきたい酸素化-疾患・病期に応じたSpO2の目標値の考え方-

                     
        
                   
        
                   
      
       

目次

呼吸についてのおすすめ記事

リスク管理のコツ

リスク管理を行うためには、対象者の患っている疾患から病態を把握し、カルテ情報やフィジカルアセスメント等を行うことが必要になります。

フィジカルアセスメントにおいては、その結果や数値だけでなく、なぜその数値になるのか、またその意味を知ることで、対象者の状態像の理解に役立ちます。

今回は、看護・リハも知っておきたい酸素化として、SpO2の目標値の考え方についてまとめて行きたいと思います。

酸素化と換気

一言で呼吸と言っても、「酸素化」と「換気」は別物で考えた方が、評価をするという点においては有効です。

「酸素化」とは、酸素が血液に取り込まれることです。

酸素化の指標として、PaO2 60mmHg以上(SpO2 90%以上)を目標とします。

「換気」とは、血液がCO2を肺胞に放出し、それが呼吸によって体の外に出されることです。

換気の指標としては、PaCO2がありますが、PaCO2の蓄積によって生じる体内の酸性化(呼吸性アシドーシス)の指標であるPHを確認することが大切です。

呼吸不全の定義

呼吸不全の定義としては、

・室内気(room air)吸入時のPaO2<60mmHg
・上記に相当するSpO2<90%

となる状態です。

SpO2が90%未満であれば低酸素血症と考えられるので、90%以上が目標値にはなるのですが、患者様の状態によりSpO2の目標値を変える事で、酸素療法の効果を上げる事が可能になります。

酸素解離曲線と低酸素の影響

酸素解離曲線は、縦軸にヘモグロビンの酸素飽和度(SaO2)、横軸に酸素分圧(PaO2)をとったグラフになります。

これは、血液ガスにおけるSaO2とPaO2の関係性を表しています。

出典:http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/sansokairi.pdf

このグラフを見ていく上で大切なことは、酸素分圧が60mmHgを切ると、曲線は急に低下していくということです。

すなわち、SpO2が90%に近づくと、PaO2は大きく下降し始めるという事です。

そして、SpO2が90%を下回ると、PaO2は急激に変化します。

同じ程度の酸素分圧に対して、ヘモグロビンの酸素飽和度の低下がより大きくなってしまいます。

この状態では、動脈血における酸素の運搬能力は著しく低下してしまいます。

詳しくは以下の記事を参照してください。
呼吸器疾患におけるリハビリテーションのリスク管理の考え方!

酸素毒素について

哺乳類では、100%の酸素を長時間吸入させると、肺胞や毛細血管の構造変化、肺水腫、無気肺が生じるとされています。

空気中の酸素濃度を超える酸素吸入は、活性酸素の増大を招き、肺細胞の障害につながる事があります。

これは、ARDS(急性呼吸促迫症候群)に似た状態を生じさせる可能性があります。

このことから、患者様の状態に応じた適切な酸素化の目標数値を設定していく必要があると言えます。

疾患や病期に応じた酸素化の目標値

British Thoracic Society Guideline」ではSpO2の推奨値を、

・急性期:94-98%
・慢性期(Ⅱ型呼吸不全):88-92%

としています。

Ⅱ型呼吸不全は、肺胞低換気を主とする病態です。

肺胞低換気という病態は、肺胞換気量の低下が生じている状態です。

肺胞内で出入りする空気が極端に減少し、体内の酸素量が少なく、二酸化炭素が多くなっている状態で、高二酸化炭素血症を伴います。

肺胞低換気が生じる原因としては、呼吸中枢の異常(呼吸抑制、麻酔、麻薬、鎮静剤、脳血管障害)、気道閉塞、神経・筋疾患、肺・胸郭・呼吸筋異常などがあります。

疾患としては、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあります。

詳しくは以下の記事を参照してください。
呼吸困難の訴えと呼吸不全の評価のポイント

Global initiative for Chronic Obstructive Lung Disease」によると、COPDにおけるSpO2の推奨値を、

・増悪時:88-92%

としています。

ADRS診療ガイドライン」では、ADRSにおけるSpO2の推奨値を、

・90%以上(PaO2:55-80mmHg)

としています。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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