深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)の臨床症状とアセスメントと注意点

                     
        
                   
        
                   
      
       

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静脈血栓塞栓症にについてのおすすめ記事

リスク管理のコツ

リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。

病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。

今回、深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)の臨床症状とアセスメントと注意点を中心にまとめていきたいと思います。

静脈血栓塞栓症とは

静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)は、深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)と、肺動脈血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)を総称したものです。

静脈血栓塞栓症は、本来止血のための血液凝固反応が、血管内で生じ、静脈を閉塞させ血栓症となります。

深部静脈血栓症は、下肢や骨盤の深部静脈に血栓が生じるものです。

深部静脈血栓症は、患側下肢の痛みや腫れ、皮膚が赤く変色することが特徴です。

肺動脈血栓塞栓症は、血栓が剥がれて肺動脈を閉塞したことで起きる病態です。

肺動脈血栓塞栓症は、閉塞の程度にもよりますが、呼吸困難、胸痛、ショック、突然死に至ることもあることが特徴です。

静脈血栓塞栓症はなぜ起こる?

静脈血栓塞栓症を引き起こす血栓は、3つの原因が考えられます。

一つ目は長期臥床に伴い静脈の血液が停滞してしまうことです。

二つ目は手術や外傷、感染症などの外的侵襲や留置カテーテルなどにより血管内皮が傷害されることです。

三つ目はがんや脱水もしくは血液凝固反応のコントロールが困難になり、血液凝固反応が高まることです。

血栓が生じる部位では、血液凝固反応が過度に高まっている状態にあります。

通常レベルでの血液凝固反応のコントロールができなくなると、「トロンビン」が大量に産生されます。

トロンビンは血小板の活性化と、フィブリノゲン→フィブリンを生成します。

これらの反応により、血栓が生じます。

post thrombotic syndrome(PTS)とは

post thrombotic syndrome(PTS)は、深部静脈血栓症(DVT)の後遺症状です。

症状としては、

・腫脹疼痛
・チアノーゼ
・潰瘍

などがあり、深部静脈血栓症(DVT)が慢性化した状態です。

DVT合併者の34%がこれに移行すると報告されています(OíShaughnessy AM, Fitzgerald DE: Natural history of proximal deep vein thrombosis assessed by duplex ultrasound. Int Angio,1997, 16: 45-49.)。

深部静脈血栓症(DVT)の臨床症状

深部静脈血栓症(DVT)では、その周囲に炎症を生じ、血管壁の肥厚や周囲の弁不全により逆流を呈します。

そのため臨床上では組織の炎症所見やうっ血症状が出現します。

身体所見として、下肢の圧痕性浮腫、圧痛、側副静脈の表在化を確認します。

また、次に示すWells score DVTも重要な評価になります。

Wells score DVT

DVTの診断を助ける評価として、Wells score DVTがあります。

以下は評価項目です。

・活動性の癌(治療中、6ヶ月以内の治療や緩和治療を含む) +1
・完全麻痺、不全麻痺あるいは最近のギブス装着による下肢の固定 +1
・臥床安静3日以上または12週以内の全身麻酔もしくは部分麻酔を伴う大手術 +1
・下肢深部静脈の走行に沿った圧痛 +1
・下肢全体の腫脹 +1
・腓腹部(脛骨粗面の10㎝下方)の左右差>3㎝ +1
・症状のある下肢の圧痕性浮腫 +1
・表在静脈の側副血行路の発達(静脈瘤ではない) +1
・DVTの既往 +1
・DVTと同等もしくはそれ以上の可能性のある他の診断がある -2

これらの合計点から、以下のようにDVTの存在確率を導く出すことができます。

・低確率:0
・中確率:1~2
・高確率:3以上

下肢術後の身体所見で注意すること

全人工股関節置換術(THA)術後などの下肢整形疾患術後において、注意するポイントがあります。

それは、深部静脈血栓症(DVT)の身体症状としての圧痛が、偽陰性となる可能性がある事です。

術後の不動や荷重制限がもたらす下腿の軟部組織における柔軟性の低下により,Hommans signが陽性となったと考えることもできる。つまり,Hommans signの手技を行った際,DVT陽性所見なのか,単なる筋の伸張痛が出現したものか,判別は難しい。

佐々木賢太郎他「深部静脈血栓症と臨床所見の関連性について─全人工股関節置換術後急性期における検討─」理学療法科学 19(4):357-361,2004

術後、血液データでDダイマーの増加がないかを確認し、疑わしき場合は造影CT等の画像検査を行う事が大切です。

DVTを合併した場合、抗凝固療法を開始後、24時間安静後の再評価により離床が可能とされています。

また、低分子ヘパリン治療後、圧迫ストッキングを装着下にて歩行を積極的に行った群では疼痛の軽減および周径の縮小が認められたとの報告があります(Partsch H, Blattler W: Compression and walking versus bed rest in
the treatment of proximal deep venous thrombosis with low molecular weight heparin. J Vasc Surg, 2000, 32: 861-869.)。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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