目次
COPD(慢性閉塞性肺疾患)についてのおすすめ記事
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で気をつけたい!CO2ナルコーシスが生じる仕組み
- 呼吸調節の仕組みと呼吸苦-COPDでの高炭酸ガス血症を中心に-
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と高炭酸ガス血症
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)ではなぜ気流閉塞が生じるか
- 慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食-栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性-
- 慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食-栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性-
- 呼吸困難の訴えと呼吸不全の評価のポイント
- 呼吸困難と換気の評価のポイント
- 酸素化と換気の違いと呼吸不全の分類
- リスク管理に役立つ血ガス分析の見方-PaCO2を中心に-
- リハビリテーションとリスク管理-呼吸に異常がある時の症状-
- リハビリテーションと呼吸-痰に対するリスク管理-
- リハビリテーションと低栄養の原因-咳のエネルギー消費を考える-
リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、CO2ナルコーシスが生じる仕組みについてまとめていきたいと思います。
CO2ナルコーシスとは
CO2ナルコーシスとは、高炭酸ガス血症によって、意識障害などの中枢神経症状を呈している病態を言います。
CO2ナルコーシスはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などにより、慢性的に二酸化炭素が貯留した方に生じます。
呼吸調節の仕組み
呼吸中枢
呼吸中枢は、「延髄」にあります。
大脳皮質から、
・興奮
・驚き
・ため息
・息切れ
・息を止める
などの情報が、延髄の呼吸中枢に入力されます。
これは、意識的な呼吸の調整であり、随意的な調節と呼ばれています。
中枢化学受容体
延髄には「化学受容体」からの情報も入力されます。
一つ目は、延髄にある中枢化学受容体です。
中枢化学受容体では、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の変化を感知します。
二酸化炭素は酸性物質なので、体内が酸性に傾いたことを感知するという事になります。
抹消化学受容体
2つ目は、頸動脈の頸動脈小体と大動脈弓の大動脈小体にある末梢化学受容体です。
抹消化学受容体では、動脈血酸素分圧(PaO2)の変化を感知します。
体内の酸素が少なくなっていることを感知するという事になります。
通常の状態では中枢化学受容体が呼吸を調節し、生命危機となる位に酸素化が低下した場合、抹消化学受容器が反応します。
肺胞の伸展受容器
「肺胞の伸展受容器」は、吸息と呼息のスイッチングの役割(呼吸運動の調節)があります。
肺胞の伸展受容器では、吸息により肺が十分に伸展された情報を入力し、呼吸に関連する横隔膜や呼吸筋に指令を出して呼吸調節をします。
CO2ナルコーシスが生じる仕組み
呼吸抑制と交感・副交感神経の関係性
通常、覚醒中は交感神経>副交感神経で優位になり、入眠後は副交感神経>交感神経で優位になります。
入眠後は交感神経による刺激は低下するので、呼吸は抑制されやすい状態になります。
酸素投与と呼吸抑制
呼吸不全の分類の「Ⅱ型呼吸不全」は、肺胞低換気を背景としたものです。
COPDはⅡ型呼吸不全に分類されており、二酸化炭素分圧が高い状態にあります。
そして、COPDが慢性化している方は、低換気状態に慣れてしまっている状態です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、高炭酸ガス血症が慢性化していたり、肺胞の気腫性病変が存在したりしています。
高炭酸ガス血症の慢性化は、中枢化学受容体における、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の変化の感知が鈍化します。
また、肺胞の伸展受容器においては、肺胞壁の破壊により肺胞の弾力性が低下するとその活動が低下します。
COPDの方では抹消化学受容体による、動脈血酸素分圧(PaO2)の変化の感知を中心に呼吸調節を行わなければならない状態になります。
そのような状態で、低酸素を感知して呼吸刺激される所に高濃度の酸素を投与すると、延髄の呼吸中枢は「楽に呼吸ができる」と認識することで呼吸刺激がなされなくなってしまいます。
すると、体内に二酸化炭素がどんどんと溜まってしまい、意識がなくなったり、自発呼吸を減弱させます。(CO2ナルコーシスの状態)。
CO2ナルコーシスを生じさせないために気をつけること
CO2ナルコーシスを生じさせないためには、酸素流量に注意することが必要です。
対象者の状態によるとは思いますが、酸素飽和度のコントロールの目標値が設定されていると思います。
そのため、普段の酸素飽和度を確認しておくことで、いきなり酸素流量を大きくしすぎることは防げると思われます。
息苦しさが生じた際の、パニックコントロール(息切れが生じたときに、息切れの状態をスムーズに回復させること)を行えるようにトレーニングしておくことも重要です。
この記事へのコメントはありません。