目次
COPD(慢性閉塞性肺疾患)についてのおすすめ記事
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で気をつけたい!CO2ナルコーシスが生じる仕組み
- 呼吸調節の仕組みと呼吸苦-COPDでの高炭酸ガス血症を中心に-
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と高炭酸ガス血症
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)ではなぜ気流閉塞が生じるか
- 慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食-栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性-
- 慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食-栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性-
- 呼吸困難の訴えと呼吸不全の評価のポイント
- 呼吸困難と換気の評価のポイント
- 酸素化と換気の違いと呼吸不全の分類
- リスク管理に役立つ血ガス分析の見方-PaCO2を中心に-
- リハビリテーションとリスク管理-呼吸に異常がある時の症状-
- リハビリテーションと呼吸-痰に対するリスク管理-
- リハビリテーションと低栄養の原因-咳のエネルギー消費を考える-
リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食として、栄養代謝によるエネルギー産生と呼吸の関係性についてまとめていきたいと思います。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とエネルギー消費
咳嗽とエネルギー消費
我々も、風邪症状の一つとして咳を経験しますが、咳は1回当たりのエネルギー消費が約2kcalだとされています。
例えば、1時間に10回程度咳をしたとすれば、1時間に消費されるエネルギーは20kcalです。
極端な話ではありますが、それが24時間続いたとすれば、1日に約480kcalを消費することになります。
このエネルギー消費量は、十分に栄養障害の要因になる事が考えられます。
咳嗽と低栄養については、以下の記事を参照してください。
リハビリテーションと低栄養の原因-咳のエネルギー消費を考える-
呼吸運動とエネルギー消費
慢性閉塞性肺疾患の病態を復習します。
有害物質吸入により、気道粘膜の刺激により、気管の末梢気道を中心に炎症が生じます。
気道炎症により気管支粘膜の分泌が増加したり、気管支を刺激から守ろうとして気管の壁が肥厚や繊維化するようになります。
すると、末梢気道が狭窄し、痰量も増加するので、息の吐きにくさや咳が出現します。
慢性的な気道炎症による気管支壁の肥厚は、非可逆的(元に戻らない)な状態になってしまいます。
また、有害物質を吸入すると、肺胞壁が壊れていまいます。
すると、細かく分かれている肺胞が一つにまとまってしまいます。
肺胞は、本来であればゴム風船のように収縮をしますが、肺胞壁の崩壊により収縮力は低下し、空気が停滞してしまいます(ゴム風船から紙風船のようになる)。
このような状態では、呼気がうまく吐き出せなくなります。
これが、慢性閉塞性肺疾患で1秒率(最初の1秒間に吐き出せる呼気の割合)が低下する原因になります。
これらのことから、COPDでは呼吸運動自体が全身運動となってしまいます。
COPDでは呼吸補助筋(胸鎖乳突筋や僧帽筋など)を積極的に利用するので、消費カロリーも大きくなります。
慢性閉塞性肺疾患と高脂肪食
一般的に、COPDにおいては、健常者の約1.5倍のエネルギー量が必要とされています。
COPDにおいて最適なのは、炭水化物ではなく高脂肪食とされています。
それは、炭水化物は食べるほど体内の二酸化炭素が貯留し、呼吸不全を引き起こしやすくなるためです。
高脂肪食には二酸化炭素の産生、貯留を抑制する効果もあります。
エネルギー代謝の仕組み
食事により摂取した栄養素は、クエン酸回路でエネルギー産生がなされます。
その時、水と二酸化炭素も産生されます。
エネルギー産生の元になるのは、炭水化物、脂質、タンパク質です。
これらは、それぞれ産生される二酸化炭素の量が異なります。
呼吸商とは
呼吸商(こきゅうしょう、英: respiratory quotient; RQ)とは、ある時間において生体内で栄養素が分解されてエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%95%86
呼吸商=二酸化炭素生産量÷代謝に必要な酸素の量で求められます。
炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質ではそれぞれ呼吸商が異なります。
・炭水化物(糖質)1.0
・タンパク質0.8
・脂質0.7
となっています。
これらのことから、脂質は二酸化炭素が産生される割合が最も少ないので、COPDにおいてカロリー摂取もでき、高脂質食は最も適した食事内容という事になります。
COPDと食事については、以下の記事も参照してください。
https://selfbodywork.jp/entry/2019/01/18/copd%e3%81%a8%e9%a3%9f%e4%ba%8b%e3%80%81%e6%a0%84%e9%a4%8a%ef%bc%81%e3%83%aa%e3%83%8f%e3%83%93%e3%83%aa%e3%83%86%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3%e3%81%a7%e7%9f%a5%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%8a/
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