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リハビリテーションと皮膚
皮膚は、圧迫や衝撃から私たちを守るだけではありません。
皮膚から感覚が入力され、その感覚情報をもとに運動が企画されたり、起こした運動を修正するためにも利用されています。
リハビリテーション対象者の方は高齢者が多く、その状態によっては皮膚状態が良くない方もいます。
皮膚に脆弱性があると、通常であれば大丈夫な衝撃でも、皮膚が弱い場合には傷を作ってしまうことがあります。
そのため、リハビリテーション実施の際には、内部疾患に対するアセスメントだけではなく、皮膚状態についてのアセスメントを行い、傷を作らないための対策が必要になります。
今回、リハビリテーションとリスク管理として、皮膚脆弱性に焦点を当ててまとめていきたいと思います。
高齢者と皮膚
高齢者において皮膚トラブルが多くなる理由を考えていきたいと思います。
まず、理解しておきたいのが「皮膚のバリア機能」です。
皮膚のバリア機能は、皮膚表面の角層という部分が担っています。
「角層」は、表皮のいちばん外側である皮膚表面の層です。
健康的な皮膚は水分を保っていますが、バリア機能が低下した皮膚では角層が傷んで水分が外へ逃げ出すため、乾燥しやすい状態になっています。
よく、高齢者の皮膚を触らせてもらうと「カサカサ」「パサパサ」した状態になっているのは、バリア機能が低下している状態だというわけです。
バリア機能を低下させる要因は、外・内的要因に分類されます。
外的要因
・紫外線
・温度・湿度の変化
・摩擦・ずれ・圧迫による刺激
・排泄物などの刺激
・皮脂などの汚れ
・空気中のほこり・ゴミ
・化学物質
・石鹸・洗剤
内的要因
・病気などによる免疫力の低下
・加齢による新陳代謝の低下
・生活リズムの乱れ
・ストレス
上記のように、様々な要因が絡み合い、皮膚のバリア機能を低下させています。
バリア機能が低下した状態では、皮膚はダメージを受けやすい状態なので、スキンケアが大切だと言われているのはこのような理由からです。
浮腫と皮膚の状態
高齢者の皮膚は、表皮・真皮が菲薄化し、表皮突起と真皮乳頭の突出が平坦化しています。
浮腫を生じさせる原因は様々ですが、浮腫があると、皮膚や皮下組織に過剰な組織間液が貯留した状態となり、皮膚はさらに菲薄化します。
このような状態では、表皮と真皮の間のずれが生じやすくなるため皮膚は剥離しやすい状態になります。
また、浮腫は血流障害で末梢への酸素供給不足や栄養不良、皮膚温の低下、皮膚の免疫力低下を生じさせるため、小さな傷からも細菌感染を起こすリスクが高くなります。
このことから、浮腫に対しても皮膚損傷のリスク管理を適切に行っていく必要があります。
リハビリテーション実施の際にできる皮膚の保護
これまで、高齢者や浮腫がある方の皮膚状態が悪くなりやすい理由を説明してきました。
リハビリテーション関係者にできることは、対象者の皮膚状態を把握し、運動の際にいかに傷を作らないようにするかという視点でリスク管理を行うことでしょう。
我々にできることをいくつか挙げていきたいと思います。
靴下、ズボンの着用
当たり前だと感じる方が大半だと思いますが、案外病院や施設ではノー靴下という場合が多かったりします。
さらに、病衣のタイプによってはズボンタイプ(パジャマタイプ)でなくガウンタイプを着用されている方もいます。
ベッドから起き上がる時、移乗する時など、皮膚損傷が生じる場面は多くあるので、靴下を履いていなければ履く、ガウンタイプの病衣を着ているのであればズボンを履くことで、皮膚損傷のリスクを低下させます。
移乗におけるフットレストの除去
移乗の時、特に全介助レベルや介助量が多い方では、臀部回転動作の際に足元が見えずにフットレストなどに下肢を接触させてしまい皮膚損傷を生じさせてしまうことが考えられます。
このようなことを避けるためには、移乗前にフットレストを除去しておくことです。
車椅子によってはフットレストを除去できないタイプもありますが、除去できるタイプがあるのならば、そちらを利用する方が皮膚損傷のリスクはかなり下げることができます。
フットレストが除去できない場合は、トランスファーボードを使用することで、足元の状態を確認しながら行える場合があります。
ダーマカバーやストッキネット等の使用
皮膚を保護するために、ダーマカバーやストッキネットを使用する場合があります。
レッグウォーマー、アームカバーで代用することも可能です。
靴下であればモコモコソックスを使用することもあります。
暑い時期は、薄い素材の日焼け用アームカバー等で代用することで、皮膚トラブルを防ぐことがあります。
皮膚トラブルの予測が大切
皮膚トラブルを防ぐには、全身の皮膚状態のアセスメントが大切です。
その上で、どのような動作や介助で皮膚損傷が生じる可能性があるかを考えることがポイントになります。
動作や介助の前にあらかじめ予測しておくことで、皮膚トラブルのリスクを低下させることが可能になります。
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