認知症者とリスク管理-チューブ・ドレーン管理における対応方法の考え方と工夫-

                     
        
                   
        
                   
      
       

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チューブ類やドレーン管理の重要性

チューブ類やドレーンは、状態の悪い方にとっては生命・健康管理においてとても大切な物です。

特にドレーンは体内に貯留した血液や浸出液、膿、消化液等を体外に排出する(ドレナージという)ために用いられるので、自己抜去があると適切な生命・健康管理が行えなくなります。

認知症者は認知機能のレベルにもよりますが、挿入・留置されたチューブ・ドレーンが「なぜ必要なのか」といった事を理解・記憶しにくくなります。

すると、不快感があったり自分が動こうとした時にチューブ・ドレーン類が邪魔になったりすると、抜去に繋がりやすくなります。

認知症者がチューブを自己抜去する理由

認知症者がチューブ類を自己抜去してしまう理由には様々なものがありますが、主には中核症状と周辺症状の影響が考えられます。

チューブ挿入に対しての理解力や注意点について記憶保持が難しいと疼痛や不快感があった場合それらを取り除こうとするため自己抜去に繋がります。

また、私自身も憩室炎での入院の際の経験で、チューブの固定を3-4日程度行いましたが、固定部位の痒みが日に日にひどくなった事を記憶しています。

このような事から、認知症者では皮膚の掻痒感があるとそれを取り除こうと自己抜去する恐れがあります。

他にも自身が起居や移乗した際に、ルートが邪魔になると、それをどうして良いか分からずに外してしまう事が考えられます。

認知症者に対するチューブ・ドレーン管理における対応方法の工夫

基本的な戦略としては、

・苦痛や不快感を取り除く
・環境調整
・抜去のための計画立案

が主なものになります。

チューブの種類やサイズについて配慮する事で苦痛や不快感を取り除く事ができないかを考えます。

対象者が苦痛や不快感を言葉で表出できる場合はいいのですが、表出できない場合には非言語的なサインを観察評価により読み取る事が大切になります。

非言語的なサインとしては、

・表情(険しい表情になっていないか)
・気分状態
・声の出し方
・呼吸状態
・身体のこわばり(緊張状態)

などがあります。

これらのような観察項目を評価しながら、苦痛や不快感に繋がっているのかを評価する必要があります。

高齢者は皮膚の脆弱性もある事から、皮膚状態の観察を行い、問題があれば清潔の保持や皮膚に負担の少ない固定用テープを用いるなどの工夫が必要になります。

環境調整としては、チューブが気にならないような場所への配置(視界に入らないような工夫)が必要です。

これは、対象者が動作する際にもできるだけ気にならないような位置に配置しておく事がポイントになります。

抜去のための計画立案ですが、例えば食事不良等により脱水傾向によりチューブが挿入されている場合、日頃より水分摂取を促す回数を多くする事を計画する事が必要です。

それにより脱水傾向が改善できればチューブの抜去が可能になるので、対象者の自己抜去という問題行動の原因をなくす事が可能になります。

比較的理解がよく、記憶の保持も悪いながらもできる方であれば、繰り返し説明を行うことで安心感を持ってもらうようにする事ができるかもしれないので、継続した関わりが重要になります。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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