目次
認知症についてのおすすめ記事
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排泄動作の流れ
排泄動作は、様々な動作が組み合わさって構成されています。
一般的に、排泄を行う流れ(動作の工程)は以下のようになります。
⑴尿意・便意を感じる
⑵トイレまで移動する
⑶ズボンや下着を引き下げる
⑷便座に座り排泄する
⑸後始末をする
⑹ズボンや下着を引き上げる
⑺手を洗う
⑻部屋まで移動する
大まかには上記8つの流れがあります。
認知症の方(だけではないが)においては、排泄動作に困難さが見られた場合、上記8つの工程の内、どの動作で問題が生じているのかを分析する事で解決のヒントが見出せるようになります。
認知症の方に対する支援の考え方
認知症の方に対して支援する場合、認知機能評価も大切ですが、より多くの情報を得られるのは観察評価になります。
観察によって、どの工程のどの動作でつまづきや戸惑い、困難さが見られるのかを評価する事が大切です。
そして、その困難さが身体機能的側面から問題が生じているのか、認知機能的側面から問題が生じているのか、もしくは環境的側面から問題が生じているのかを検討する事が重要です。
アルツハイマー型認知症の中期に見られる機能障害
・短期記憶、長期記憶障害
・観念失行
・観念運動失行
・失語症(錯誤、失名詞、理解力低下)
・失認
・不穏
・空間関係の障害
アルツハイマー型認知症の中期に見られる機能障害があると、動作手順の混乱や空間に対する誤認識等により、トイレ動作遂行に困難さが生じることが考えられます。
失禁はアルツハイマー型中期から見られ始めますが、後期ではそれが常にみられるようになります。
【尿意・便意を感じる】工程における問題点と介入のヒント
失禁が生じる理由として、尿意・便意の曖昧さがあります。
その場合、排泄に関する疾患(脊髄や脳の問題、泌尿器の問題)があるかどうか、またその程度を確認する事が大切です。
認知症の方では、「トイレに行きたい」と伝える事が困難になっている場合もあります。
そのような方では、例えばもじもじしたり、何かそわそわしているのが排泄のサインになっている場合があります。
観察評価と排泄の結果を参照しながら、どのような様子が排泄につながるのかを確認して行く事が大切になります。
排尿・排便パターンの確認も重要で、失禁がある方ではそのパターンを確認する事で排泄前に誘導する事が可能になります。
パターンの確認には、排尿日誌がよく活用されています。
その際、排泄量の確認や残尿がどの程度あるかを確認する事も必要になります。
排尿日誌については以下の記事を参照してください。
排泄リハビリテーションのための排尿日誌の記録のポイントとケアへの活かし方!
【オムツ外し、弄便】における介入のヒント
弄便とは、オムツ内の便を素手で触ったり、その手で服や壁に便を擦り付ける行為です。
オムツ外しでは、尿意や便意を感じている合図の可能性が高く、トイレ誘導を行うタイミングとなる事が考えられます。
弄便では、オムツ内失禁が放置されると問題になりやすいので(対象者、援助者双方にとって)、早めの排泄物処理や下着変更など不快感をなくせるような配慮が必要になります。
【トイレの認識】が乏しい場合における介入のヒント
これは、見当識障害や視覚機能の問題、トイレを示すシンボルマークの理解不十分さなどが影響しています。
このような場合、トイレへの導線がわかりやすいように照明の調整や眼鏡の使用、トイレと認識できるような表示方法の検討、視覚確認しやすい場所への張り出しなどを行う必要があります。
【ズボン・下着の引き上げ、引き下げ】における介入のヒント
衣服の操作において、巧緻性の問題や視覚機能の問題が影響しているのであれば、ジッパーにリングをつけるなどして操作しやすくする工夫が必要です。
また、ズボンの素材やウエストゴムの調整により引き上げ・下げしやすくする工夫もあります。
トイレ動作という一連の流れの中で手順に戸惑いがあったり動作が止まってしまった場合、声かけや指さし、身体誘導により動作手順を想起させる事が有効になります。
【起立・立位動作(便座)】における介入のヒント
起立や立位動作が困難な場合、手すりの把持位置を高くして上肢での引き込みを行いやすくしたり、補高便座を用いて起立しやすい環境を設定する工夫が必要です。
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