目次
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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、看護・リハも知っておきたい動悸と不整脈として、心房細動(AF)と対応、治療について、まとめていきたいと思います。
動悸とは
動悸とは、普通では自覚されない心臓の拍動やその乱れを自覚することです。
人によって動悸の感じ方が異なるため、「ドキドキ」「ドクドク」「ドックン」など、様々な訴えが聞かれます。
動悸は、脈の速さに関係なく、脈拍が普段と異なるだけで動悸と言う表現になります。
そのため、どのような動悸なのかを把握することが必要になります。
不整脈としての動悸
心拍数は「心臓の脈拍の数」で、脈拍は「末梢血管における脈動の数」と言う違いがあります。
不整脈がある場合、その瞬間の心臓の拍動が末梢血管にそのまま伝わるとは限りません。
そのため、末梢血管における脈拍は跳んだり、休んだりするように感じることがあります。
すなわち、不整脈の場合は必ずしも心拍数と脈拍数は等しくはなりません。
正常な心臓は1分間におおよそ60-70回、規則的に収縮します。
不整脈は、何らかの原因により、規則的な心臓の収縮リズムが崩れてり状態です。
不整脈は、心拍数が多い、少ない、本来のタイミングでないときに収縮するなど様々なパターンがあります。
このような不整脈を自覚した場合に、「動悸」として認識されます。
心房細動(AF)とは
心房細動(AF)とはどのような病態か
心房細動は、心房が不規則に興奮している状態です。
洞結節からの刺激は発生せず、心房収縮は起きません。
心房の不規則な興奮が房室結節に無秩序に伝わるため、心室の興奮周期は不規則になります。
心室内の刺激伝導は適切な状態となっています。
心房で生じた不規則な電気刺激は心室に伝わりますが、この刺激は普通よりも速く伝わるので、心拍数は上昇します。
心房細動では、心房が正確に収縮しないので、心房→心室へと血液を送ることに障害が生じます。
すると、心臓から全身に送り出す心拍出量は低下します(心機能が20-30%低下すると言われている)。
基礎疾患としては、僧帽弁狭窄省、高血圧、心筋症、甲状腺機能亢進症など、左房負荷のかかる疾患で発生頻度が高い事が特徴です。
また、ストレスやアルコールなどが誘因となり発症する場合もあります。
頻脈性心房細動と徐脈性心房細動
心房細動は頻脈性と徐脈性に分けられています。
頻脈性心房細動と徐脈性心房細動は、刺激伝導の形式は同じですが、原因には違いがあります。
頻脈性心房細動は房室結節からの刺激の多くが心室筋に伝えられます。
徐脈性心房細動は房室結節からの刺激が一部しか伝わっていない状態です。
心房細動の症状
心房細動により心拍数が上昇すると、自覚症状として「動悸」を感じることがあります。
また胸部の不快感を感じることもあります。
心房細動があると心拍数が上昇しますが、すると心房→心室に血液を送り、心室に満たされる血液量が少なくなります(血液が満たされるための時間確保が困難になる)。
これにより心拍出量が減少し、結果として血圧が低下しやすくなります。
またこれは心不全にも繋がります。
心拍出量の低下により「疲れやすい」「冷える」「だるい」「動悸がする」などの症状に繋がります。
心拍数の上昇は心不全や胸痛を引き起こすこともあるため注意が必要になります。
徐脈性心房細動では、血圧低下、めまい、嘔気などが見られます。
心房細動が長時間続くと塞栓症を発症する可能性もあります。
これは、心房内の血液うっ滞により左房内血栓が形成され、心原性脳梗塞を発症することに繋がります。
CHADS2スコアと脳塞栓発症の危険因子
CHADS2(チャッズ・ツー)スコアは、心房細動による脳梗塞発症リスクを評価するスコアとして提唱され、脳梗塞発症に関連する5つの危険因子の頭文字[Congestive heart failure /LV dysfunction(心不全、左室機能不全)、Hypertension (高血圧症)、 Age(年齢75歳以上)、Diabetes mellitus (糖尿病)、Stroke/TIA(脳梗塞, 一過性脳虚血発作の既往)] から命名されました。
各危険因子に1点あるいは2点が付与され、その合計点数が高 いほど脳梗塞の発症リスクは高くなります。
CHADS2スコアは、わが国でも心房細動患者さんにおける脳梗塞発症リスクの評価に対する有用性が認められています。
また近年では、年齢65歳以上を危険因子とする考え方もあります。
https://pro.boehringer-ingelheim.com/jp/sites/default/files/2020-11/chads2.pdf
HADS2スコア
心不全 1点
高血圧 1点
年齢≧75歳 1点
糖尿病 1点
脳梗塞やTIAの既往 2点
となっており、2点以上で抗血栓療法が行われます。
心房細動のモニター心電図の特徴
心房細動で見られるモニター心電図の特徴
心房細動の病態は前途しました。
それらを整理すると、モニター心電図上では以下のような特徴が現れます。
・心房が不規則に興奮。
・洞結節からの刺激は発生せず、心房収縮は起きない
→P波なし。代わりにf波(基線が細く動揺する)
・心房の不規則な興奮が房室結節に無秩序に伝わるため、心室の興奮周期は不規則になる
→RR間隔が不規則
・心室内の刺激伝導は適切な状態
→QRS波は同じ形
心房細動で見られるモニター心電図の実際
心房細動で見られるモニター心電図の波形は、基本的には以下のようなものになります。
モニターの波形の見方のポイントですが、形で覚えるのではなく、あくまで前途した、
・P波なし。代わりにf波(基線が細く動揺する)
・RR間隔が不規則
・QRS波は同じ形
という3つのポイントを把握しておくことが重要になります。
このポイントを押さえながら、心拍数が100回/分を超えると頻脈性心房細動になります。
心房細動の治療ではどのような事が行われるか
心房細動では、抗凝固療法が行われます。
これにより、塞栓症を予防します。
また、レートコントロール(心拍数調節)とリズムコントロール(洞調律維持)が行われます。
レートコントロールでは、薬剤により心拍数が速くなりすぎないようにコントロールし、自覚症状を軽減します。
リズムコントロールでは、抗不整脈薬の内服やカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による根治療法が行われます。
徐脈性心房細動は、薬剤の影響により生じることがあることを把握しておく必要があります。
心房細動では、薬剤によって心拍数のコントロールがなされているためです。
ジギタリス製剤、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などの薬剤が効きすぎると、心拍数が低下することがあります。
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