脱水のリスク管理-脳浮腫による後遺症や浸透圧性脱髄症候群-

                     
        
                   
        
                   
      
       

目次

脱水についてのおすすめ記事

リスク管理のコツ

リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。

病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。

今回、脱水のリスク管理として、脳浮腫による後遺症や浸透圧性脱髄症候群についてまとめていきたいと思います。

脱水の概要と種類

脱水とは

脱水とは、

・水分摂取量の減少
・水分喪失量の増加
・上記2つが同時に発生

している状態です。

脱水の種類と特徴

高張性脱水

高張性脱水は、血漿浸透圧の上昇によりナトリウム(Na)よりも水分の方がより多く失われる状態です。

細胞内の脱水が高度となり強い口渇を生じます。

高熱や腎濃縮力低下、意識障害、口渇中枢の障害などが背景にあります。

発汗が亢進され、水分の自己摂取が難しい場合に高張性脱水に至りやすい事が特徴です。

等張性脱水

等張性脱水は血漿浸透圧は変化しません。

そのため、細胞外液の浸透圧と同等の浸透圧の体液が失われます。

等張性脱水は、高張性脱水に移行しやすい事が特徴になります。

循環血液量が低下するので、症状としては血圧低下が生じます。

下痢や嘔吐、熱傷や出血などが背景にあります。

低張性脱水

低張性脱水は、血漿浸透圧が低下し、ナトリウムが水分よりも多く失われます。

細胞内に水が移行することにより細胞外液が減少します。

すると末梢循環不全が生じるので、症状として血圧低下や顔面蒼白、四肢冷感が生じます。

副腎皮質機能不全症、塩類喪失性腎症や利尿薬の過剰投与など医原性(治療のために行われた医療行為が、新たな疾患を引き起こすこと)によるものも多い事が特徴です。

脱水と脳浮腫

脱水では脳浮腫が生じる可能性があります。

低張性脱水では、血漿浸透圧が低下し、ナトリウムが水分よりも多く失われます。

このような状態では、細胞内に水が移動します。

脳の神経細胞にも水が入り込んでくるため、脳浮腫が生じます。

脳浮腫が生じると脳は圧迫を受けるので、脳神経の障害に繋がり、下肢麻痺や認知機能低下などが生じる事があります。

脱水と浸透圧性脱髄症候

低張性脱水では、血漿浸透圧が低下し、ナトリウムが水分よりも多く失われます。

その際、低ナトリウムの状態を短時間で治療しすぎると、血清ナトリウム濃度が急激に上昇することになります。

すると、浸透圧性脱髄症候群という、かえって神経損傷のリスクが高まります。

橋に脱髄を起こしたものはcentral pontine myelinolysis(CPM)と呼びます。

また、橋以外の視床、被殻、大脳皮質などに脱髄病変が認められるものはextrapontine myelinolysis(EPM) と呼ばれています。

損傷部位により症状は異なりますが、構音障害や嚥下障害、四肢麻痺などが生じる可能性があります。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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