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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
今回、胸部X線と心胸郭比、関連事項として心筋収縮力とスターリングの法則についてまとめていきたいと思います。
心胸郭比とは
心胸郭比(Cardio Thoracic Ratio:CTR)とは、胸郭横径に対する心横径の比率を百分率で表した指標です。
心臓がどの程度拡大しているかを知る事ができます。
成人では50%以下が正常である.しかし,乳幼児や肥満者,臥位で撮影したポータブルX線写真の場合は50%以上でも必ずしも異常とはいえず,理学所見などを参考に総合的に評価する.一方,CTRが60%以上であれば,間違いなく何らかの異常があると考えて差し支えない.
原田 昌彦「胸部X線でみつかった心拡大」medicina 44巻12号 , 2007年11月 , pp.72-77
心胸郭比を確認する際の注意点としては、心臓が横向きになっていたり、rotationがかかったり、深呼吸が十分できていないと正常であっても、大きくみえてしまうことがあります。
そのため、本当に心臓の内径が大きいかどうかは、心臓超音波検査をして確認する事が必要です。
心拡大と心肥大の違い
心拡大というのは、心臓の内径、内腔の大きさが大きいことです。
心肥大とは、心臓の筋肉の壁が肥厚し、分厚くなっている状態です。
心胸郭比を知る意義
心拡大と心不全
心不全は、以下のように定義されています。
なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
これはどういうことかと言うと、「心臓のポンプ機能」、すなわち血液を送り出す働きと血液を受け取る働きがなんらかの原因で破綻することで起こります。
これにより、全身組織に必要な血液量(心拍出量)を送り出すことができない状態に陥ります。
心拡大と心不全の関係性についてですが、心臓が大きくなることは、長期間にわたって心臓に無理な負担がかかっている事を表しています。
心筋収縮力とスターリングの法則
心臓は、負荷が大きいほど心臓の仕事量が多くなり、負担が大きくなります。
心不全では、心臓のポンプ機能の低下、すなわち血液を送り出す働きと血液を受け取る働きがなんらかの原因で破綻している状態です。
これにより、全身組織に必要な血液量(心拍出量)を送り出すことができない状態に陥ります。
この時、心拍出量に影響を与える要因として前負荷があります(他に後不負荷、心筋収縮力、心拍数がある)
前負荷とは、収縮直前の状態で加えられる負荷のことで、拡張末期の壁応力を指します。
すなわち、収縮開始前に心臓にかかる負荷で、全身から心臓に戻る血液量で表されます。
全身から心臓に戻る血液量が多くなればなるほど、心臓には負担がかかっているという事を示しています。
この場合、心室容積が大きくなりますが、心筋はより引き延ばされているので、心筋はより強く収縮し、心室はより多くの血液を動脈内へと駆出します。
前負荷が大きいほど心臓が駆出するべき血液量が増えるということになります。
この血液を送り出す能力は、心筋が伸びれば伸びるほど大きくなるという考えを、スターリングの法則と言います。
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