目次
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リハビリテーションと痰の管理
リハビリテーションでは、呼吸器疾患をお持ちの方や心不全による胸水貯留などから、痰が多く排出される方がいます。
痰の排出量が多すぎると、呼吸困難感の増大や酸素化が妨げられるなど、リハビリテーションを行う上で弊害が生じます。
そのため、排痰を促す関わりが求められます。
今回、リハビリテーションと呼吸をテーマとして、排痰の基本である「咳の介助」についてまとめていきたいと思います。
痰はなぜ出てくるのか
「痰」は、肺にある分泌物や吸い込んだ空気中の異物が気道の粘液に付着したものです。
健康的な方は、痰はほとんど排出されないのですが、気道や肺から1日当たり60-100mlが産生されています。
健康な方において、痰の体外への排出が行われないのは、「繊毛」により吸収や蒸発するためです。
60-100mlの痰のうち10ml程度が咽頭に達しますが、無意識のうちに嚥下するため、体外への排出はほとんどないという事になります。
痰が増加する理由
痰が増加する理由を以下に挙げます。
・分泌物の増加(感染や炎症によるもの)
・分泌物の性状変化(粘り気が出る)
・線毛の運動障害
・気道内気流低下(呼吸運動減弱によるもの)
心不全などによる胸水貯留によっても、痰の増加が認められるため注意が必要になります。
痰の症状がある場合、一番に気をつけないといけないことは、各種分泌物や喀痰が気道にたまって気道を狭窄する事による、窒息や呼吸困難です。
気道を狭窄の原因となるのは、以下のようなものがあります。
・勢いのある呼気ができない
・勢いのある咳ができない
・嚥下障害で胃の中に痰を飲み込めない
・気管切開(カニューレ挿入)により勢いのある呼気や有効な咳ができない
そのため、排痰を自分でまたは介助によってしっかりとできるようにすることが求められます。
排痰と咳
咳の4相
咳は、4つの相に分けて考えられています。
・第1相:刺激による咳の誘発(誘発)
・第2相:深い吸気(肺気量)
・第3相:声帯を閉じた圧迫(圧縮)
・第4相:呼気筋による爆発的な呼出(呼出)
痰を移動させるのに、咳は有効な方法になります。
呼吸を行うと気道内において気流が発生します。
呼気流(咳)は、その速度が早いほど痰を移動させる力が大きくなります。
咳の最大流量(Cough Peak Flow:CPF)
咳嗽能力の指標として、近年は咳の最大流量であるCPFが用いられています。
CPFは随意咳嗽を行わせるもので、咳嗽の第3~4相にかけての声門を開放する速度やタイミングによって影響を受ける傾向にあります。
そのため、咳をするタイミングに合わせた介助を行うことにより、咳の最大流量を増加させ、痰の移動を促すことが求められます。
なお、CPFは臥位よりも座位において高い数値になることが示されています。
端座位と背臥位を比較すると、座位では胸郭は圧迫されません。
座位では腹部臓器が下方へ移動し横隔膜への抵抗が減少するので、第2相で吸気運動が行われやすく、深い吸気を得やすくなることが考えられます。
また、胸郭の拡張により、筋張力が得られやすくなり、第3、4相において呼気筋の活動が促されやすいくなることが影響しています。
このようなメカニズムにより、座位での咳の方が、最大流量が高くなると考えられています。
咳の介助方法
排痰を促す咳の介助方法ですが、大きくは2種類があります。
①咳に合わせて下内側(背骨に向けて)に胸郭を押し下げる(両側)
②咳に合わせてお腹の上の方を圧迫する(咳の時にお腹が膨らむのをおさえる)
上記のような介助方法を用いて、咳の介助を行い、排痰を促します。
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