リハビリテーションと呼吸-仰向け姿勢(背臥位)と呼吸の関係性-

                     
        
                   
        
                   
      
       

目次

呼吸についてのおすすめ記事

姿勢の重要性

日常生活においては様々な姿勢をとることで、目的のある活動が遂行されます。

そして、姿勢を目的に合わせて変化させて行くことで、スムーズな動きとなります。

姿勢は呼吸においても重要で、姿勢により呼吸のしやすさが異なります。

呼吸リハビリテーションにおいて、姿勢変換は排痰手技にも使用されており、姿勢と呼吸の関係性を理解しておくことが必要になります。

今回、リハビリテーションと呼吸における、仰向け姿勢(背臥位)と呼吸の関係性についてまとめていきたいと思います。

仰向け姿勢の特徴

まずは、仰向け姿勢を、メリットとデメリットの両面から考えていきます。

メリット
・支持面が広い
・筋緊張が最も低くなる
・頭部が動かしやすい
・胸郭が動きやすい
・吸気優位になる
・下肢が伸展していると胸式呼吸優位になる

背臥位は、もっとも安定した姿勢であり、リラックスしやすい姿勢とも言えます

デメリット
・気道確保が難しい(頸部の伸展、左右回旋)
・舌根沈下になりやすい
・非対称になりやすい(頭が左右に動くため)
・呼吸が浅くなる(上部肋骨の動きの低下)
・下肢が伸展していると腹式呼吸が浅くなる (腰椎の前彎が強まり、腹部が張る)
・有効な咳がしにくい

背臥位は、呼吸という視点で考えると、デメリットが多い印象になります。

なお、比較になりますが、立位は横隔膜が可動しやすく、胸腔内への静脈還流が減少し、呼吸数、換気量が増加して動脈血二酸化炭素分圧が減少するとされており、呼吸においては有利な姿勢と言えます。

背臥位で呼吸がしにくくなるのはなぜか

よく、背臥位では呼吸がし

にくいといった事を耳にすると思います。

その理由としては、背臥位における「横隔膜」との関係性を理解することが重要です。

背臥位では、横隔膜が圧迫されて呼吸がしにくくなるのです。

座位や立位では、重力により腹部臓器は下方へ下がっているのですが、ベッド上で背臥位になると、腹部臓器が胸腔にも広がります。

すると、横隔膜を圧迫し、その動きを制限してしまいます。

背臥位で呼吸がしにくい場合、ベッドの角度を上げる(ギャッジアップ)ことで腹部臓器は重力で下がることを利用し、横隔膜の動きの制限をなくします。

はっきりと推奨されているギャッジアップ角度はありませんが、寝返り動作を阻害しない程度に角度を設定することが望ましいと言えるでしょう。

また、ギャッジアップには唾液による誤嚥性肺炎の予防にも効果があります。

背臥位と機能的残機量

座位や立位から臥位になると、横隔膜は4cm程度挙上します。

横隔膜の挙上は機能的残機量(平時の呼気終末で肺に残るガス量)が15-20%減少すると言われています。

機能的残機量が低下すると、肺内シャント(肺胞内のガスと肺胞毛細血管を流れる静脈血が接触せず、ガス交換をしないまま心臓に還流している状態)の増加や、換気血流比の不均衡(肺胞換気量と肺循環血流量の比がばらつき、ガス交換効率の低下した状態)をもたらし、酸素運搬能が低下します。

機能的残機量は、側臥位や腹臥位では仰臥位に比べて増加し、座位ではさらに増加します。

そのため、背臥位で酸素化が低下する場合、側臥位(もしくは腹臥位)、座位と姿勢を変換することで改善することがあります。

                     
        
                   
        
                   
      
       

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