目次
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リハビリテーションとリスク管理
リハビリテーション実施の際には、対象者が患っている疾患の病態を把握し、その上で全身状態のアセスメントを行う必要があります。
全身状態の把握には、フィジカルアセスメントや血液データなど、様々な指標を確認しながら対象者の全体像を捉える事が求められます。
そして、適切な運動処方を決定し、リハビリテーションを提供することで、リスク管理を踏まえたリハビリテーションが実施できる事になります。
ただ、この病態把握と全身状態の把握をするのが難しいと感じることが多々ありますが。
今回は、リスク管理の中でも、低アルブミンと胸水の関係性についてまとめていきたいと思います。
低アルブミン血症とは
低アルブミン血症とは、アルブミン(血液中タンパク質)が、正常よりも低くなっている状態の事です。
アルブミンが低下する要因を以下に挙げます。
・肝機能低下(アルブミン合成障害)
・腎不全、ネフローゼ症候群(腎臓からのアルブミン漏出)
・広範囲のやけど(体表面からのアルブミン漏出)
・たんぱく漏出性胃腸炎(消化管からのアルブミン漏出)
・感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍などの疾患、手術などの侵襲(アルブミン消費増大)
これらのように、血清アルブミン値の低下はて栄養だけでなく、様々な要因が関係しているということを理解しておくことが重要です。
胸水とは
肺は、胸壁に囲まれた胸腔内に存在し、肺の外側は胸膜という薄い膜で覆われています。
胸膜は胸壁側(壁側胸膜)と肺を覆っている胸膜(臓側胸膜)の2枚から成り、この間にたまった液体が「胸水」です。
正常でも少量程存在し、胸膜がこすれない様に潤滑液としての役割を果たしています。
胸水は、壁側胸膜から産生され、臓側胸膜から吸収されることにより、一定の量を保っていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れると胸水が貯まってきます。
普通のエックス線画像で胸水がわかるのは150ml以上たまった場合で、胸部CT画像では少量の胸水でも分かります。
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=68
胸水貯留で見られる症状としては、
・胸の違和感
・咳
・息苦しさ(胸水の量が増えると生じる)
が代表的です。
リハビリテーション実施の際には、パルスオキシメーターを使用し、酸素化がしっかりとなされているかを確認しながら運動負荷を高めて行くことが必要になります。
しかしながら、胸水貯留が少量の場合や、貯留速度がゆっくりとしている場合は、無症状で経過する場合があるため注意が必要です。
胸水は、滲出性胸水と漏出性胸水に分類されます。
滲出性胸水は通常は片側性で、肺炎、感染、腫瘍、膠原病性胸膜炎などで確認されます。
漏出性胸水は通常は両側性で、心疾患(心不全)、肝疾患、腎疾患などで確認されます。
低アルブミン血症で胸水が出現するメカニズム
低アルブミン血症では全身のむくみや腹水、胸水、尿量の減少などが見られます。
低アルブミン血症の状態では、血管内の水分が血管外に移するためです。
この時キーワードになるのが、「膠質浸透圧」です。
膠質浸透圧とは、血漿蛋白質による浸透圧のことを指します。
この浸透圧により、水を血管内に保とうとする力が働きます。
血清中のアルブミンは、膠質浸透圧として毛細血管内に体液を保持する作用があります。
これが、低タンパク血症の状態になると、膠質浸透圧が低下します。
すると、血管内の水分が組織に移動し浮腫を生じさせるのです。
アルブミンが低下する原因となるものについては、上記一覧を確認し、対象者に当てはまるものがないか確認してください。
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