目次
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運動と栄養の関係性
身体機能を向上させたい!日常生活能力を向上させたい!
そう考えた時に、ただ単に運動を行わせれば良いというものでもありません。
それはなぜかと言うと、対象者の全身状態が関係しています。
今回のテーマである栄養の観点からすると、低栄養状態で運動を積極的に行うと、逆に対象者の機能低下を引き起こしてしまう事があります。
低栄養を引き起こす要因の一つとして、「食欲低下」があります。
食欲低下の原因は様々ですが、その要因を分析し、栄養状態を改善する事が、積極的な運動による効果を期待できるようになります。
食欲低下の原因
食欲低下の原因にはいくつかの要素が考えられます。
・食習慣、環境
・嚥下機能低下
・がんや、手術、薬物療法、放射線治療などの治療の影響
・消化器系の症状(胃炎、吐き気、便秘、下痢など)
・身体症状(痛み、息苦しさなど)
・口腔内環境(味覚の変化、口内炎、口内の乾燥、入れ歯が合わないなど)
・精神的要因(不安、抑うつ、せん妄、ストレスなど)
原因を考えただけでも、上記のように多数の事が考えられます。
そのため、食欲低下の原因を詳細にアセスメントしながら、対策を講じて行く必要があります。
今回は、食欲低下の原因の中でも、嚥下機能に焦点を当てていきたいと思います。
摂食と嚥下
摂食とは、「食べること」を意味しています。
食べ物を見て、それが何であるかを認識し、咀嚼、嚥下するまでの流れ全体を示しています。
嚥下とは、「口の中で食べ物を飲み込みやすい形にし、食道から胃へ送り込むこと」を示しています。
摂食嚥下には、以下のうような流れがあります。
認知期
食物であるということを認知して、何をどのように食べるかということを判断していきます。
この期における観察評価のポイントは、嚥下する前にたくさん口の中に入れていないか(ペーシングの問題)、拒食がないかなどを見ていきます。
準備期
食物を口の中に取り込み、食物を噛んで食塊を作ります。
この期における観察評価のポイントは、唾液や食物が口唇からこぼれていないか、咀嚼が困難ではないかを見ていきます。
口腔期
食塊を口腔から咽頭に送り込んでいきます。
この期における観察評価のポイントは、嚥下後に食物が口の中に残っていないかを確認します。
咽頭期
嚥下反射により食物を咽頭から食道に送り込みます。
この期における観察評価のポイントは、誤嚥によるむせがないか、むせはなくても呼吸や声に変化がないかを確認します。
食道期
食塊を食道から胃に送り込んでいきます。
この期では胸やけん有無を聞いたり、嘔吐することがないかを確認します。
嚥下機能の低下に気づいているか
嚥下機能低下があっても、その存在に気づかないパターンが存在します。
過去に嚥下障害を診断されたことのない患者でも、薬剤による影響や、心配ごと、発熱、睡眠不足などで容易に嚥下機能が低下するため、実際に食事場面を観察して、食後の呼吸状態や声質の変化の有無を確認する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/27/3/27_885/_pdf/-char/ja
そのため、精神面も含めた全身状態のアセスメントが必要になりますが、食欲低下の訴えや食事摂取量低下が見られている場合には、嚥下機能低下を疑うようにする事が良いかもしれません。
嚥下機能低下のサイン
嚥下機能低下のサインは、気づきやすいものもあれば、気づきにくいものもあります。
摂食嚥下障害の方が訴える典型的な症状は、飲み込みにくい、むせる、といったものです。
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sesshokushougai/shoujou.html
しかし、明らかな訴えがない場合も、実は非常に多いのです。
食事中に感じている症状ではなく、夜間に咳こむようになった、発熱を繰り返す、体重が1か月で5%以上、半年で10%以上も減少している、脱水症状の出現などを主訴として受診し、これらの症状は、嚥下障害によるものであったという場合も多いのです。
嚥下機能低下を疑う現象としては、以下のものが考えられます。
・食事でのむせこみ
・湿性嗄声(痰が絡んだようなごろごろとした声)
・食後に痰が絡む
・口から食べ物がこぼれる
・口や喉に食べ物が残る
・食事での疲労感
・食べ物が喉に詰まって逆流する
これらの現象が確認される場合には、嚥下機能低下を疑うようにします。
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