目次
くも膜下出血についてのおすすめ記事
- くも膜下出血の病態理解-予後に影響を与える脳血管攣縮-
- くも膜下出血の病態理解-予後に影響を与える脳血管攣縮-
- くも膜下出血の病態理解-予後を左右する循環血液量のアセスメント-
- リスク管理に活かす脳ヘルニアと midline shiftの関係性-頭部CT画像の特徴-
- 脳血管疾患とリスク管理-脳血流量の考え方-
リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者の患っている疾患から病態を把握し、カルテ情報やフィジカルアセスメント等を行うことが必要になります。
フィジカルアセスメントにおいては、その数値だけでなく、なぜその数値になるのか、またその意味を知ることで、対象者の状態像の理解に役立ちます。
今回は、くも膜下出血の病態理解として、予後に影響を与える一時的損傷(直接的脳損傷)についてまとめて行きたいと思います。
くも膜下出血とは
くも膜下腔へ出血をきたした疾患がくも膜下出血である。
外傷等を除いた内因性疾患ではその原因の85 %は脳動脈瘤破裂によるもので、10%が原因不明、5 %が脳動静脈奇形など他の疾患によるとされる。
破裂脳動脈瘤では、急性期の再破裂防止の問題とともに、脳血管攣縮による脳虚血や正常圧水頭症などのさまざまな問題が、発症後およそ1ヶ月の間に続発し、治療法が進歩した現代においても、死亡率・神経学的後遺障害ともに未だ高く、克服するべき脳卒中の代表疾患の一つである。
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%81%8F%E3%82%82%E8%86%9C%E4%B8%8B%E5%87%BA%E8%A1%80
くも膜下出血の予後不良因子
くも膜下出血の予後不良因子としては、主に3つあります。
・一時的損傷(直接的脳損傷)
・再出血
・脳血管攣縮
脳血管攣縮とは
薬剤や機械的刺激,血管作動性物質やホルモンの作用により,一過性に血管が異常収縮をおこし灌流組織の虚血を生じること。
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0502.html
わかりやすく言うと、血管が縮むことにより脳の血流が遮断・減少することで脳虚血が生じることです。
これは、発症2週間以内に生じる脳血流の低下で、遅発性脳虚血と呼ばれており、脳梗塞と同じ状態になります。
脳血管攣縮は、くも膜下出血後4-14日後に生じやすいとされており、くも膜下出血患者の30-70%に見られます。
くも膜下出血の程度が大きいほど血管攣縮が生じやすくなります。
循環血液量アセスメントの重要性
脳血管攣縮を防ぐための基本方針の中に、「循環血液量維持」があります。
体の中を循環している血液の量が減ると血圧が下がります。
脳血管攣縮では、脳血流維持のために高めに血圧を設定することが必要なので、循環血液量が低下すると血管攣縮のリスクが高まってしまいます。
くも膜下出血と尿
くも膜下出血の術後では、希釈尿(比重の低い尿を)や多尿が見られることがあります。
多尿の基準として、正常の場合、1日1,000~2,000mL排泄されますが、多尿では2,500~3,000mLとされています。
くも膜下出血などの脳血管障害によって、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)やANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)が過剰に合成、分泌されることがあります。
これらは、集合管におけるナトリウムの再吸収を抑制し、尿中ナトリウム排泄を亢進させます。
ナトリウムの再吸収を抑制は、尿細管の浸透圧を上昇させるため、水の再吸収も抑制されます。
このような病態を「中枢性塩類喪失症候群」と呼びます。
この病態では、ナトリウム利尿亢進により低ナトリウム血症や循環血液量低下を引き起こします。
この他にも、尿量が増加する原因として「不適切分泌症候群」などがあります。
循環血液量の評価に大切なアセスメント項目
循環血液量の評価で大切なアセスメント項目としては、前途した尿量に加えて、以下のようなものがあります。
・水分摂取量
・脱水の評価(皮膚ツルゴール反応、口唇の乾燥など)
・代謝水(摂取した食べ物が体内で分解されるときに発生する水;約300mℓ/day)
・不感蒸泄(発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失)
皮膚ツルゴール反応は、一般的に皮膚の張りをさします。
皮膚をつまみ、皮膚の戻る時間を計る触診を行うことで、脱水の評価をします。
皮膚が元の状態に戻るまでに2秒以上かかる場合は、ツルゴールの低下と判断し、脱水の可能性を疑います。
高齢者では鎖骨付近の皮膚で行うと評価しやすくなります。
不感蒸泄については、発熱,熱傷,過換気状態などの因子により増加します。
循環血液量の低下が生じると、代償的に心拍数が上昇するので、その辺りも大切なアセスメント項目になります。
この記事へのコメントはありません。