目次
電解質についてのおすすめ記事
- リハビリテーションとリスク管理-電解質異常と不整脈-
- リハビリテーションと易疲労性-原因③電解質異常-
- 高カリウム血症と脈拍-なぜ徐脈になるか-
- リハビリテーションとリスク管理-腎機能の理解から腎不全における症状を確認-
リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
薬剤においては、服用している薬剤がどのような作用があり、一方でどのような副作用があるか、またそこから予測されるリスクを考える事で、リスク管理につなげる事が可能です。
今回、リハセラピストも知っておきたい電解質輸液の種類と違いについてまとめていきたいと思います。
細胞内液と細胞外液
体液は、細胞膜により細胞外液と細胞内液に分けられています。
その割合は細胞内液:細胞外液が2:1となっています。
電解質輸液を使う目的
電解質輸液を用いる目的は、細胞外液または細胞内液のどちらか、または両方の体液量を増加さえたい場合です。
電解質輸液の種類によって、その効果が異なります。
5%ブドウ糖液
5%ブドウ糖液を投与する目的は、水分提供になります。
これは、ブドウ糖は体内ではすぐに代謝されて水になるためです。
5%ブドウ糖液は細胞外・内液の両方に、均等に分布します。
基本的な効果は、細胞外液と細胞内液の両方に、均等に増加させたい場合に用いられます。
実際の使用場面としては、脱水症があります。
脱水症では水分が喪失されるので、5%ブドウ糖液が使用されます。
ただし、低張性脱水(ナトリウムの欠乏を伴う脱水)においては、電解質が含まれない5%ブドウ糖液は効果を発揮しません(逆に症状を悪化させる)。
細胞外液補充液
細胞外液補充液は、その名の通り細胞外の水分を補充したい場合に用いられます。
細胞外液補充液は、電解質の浸透圧が体液と同程度のため、投与後に細胞内には移動せず、細胞外へ分布することになります。
細胞外液補充液の種類としては、
・生理食塩液:0.9%の塩化ナトリウムを含んだもの
・リンゲル液:生理食塩水にカリウムやカルシウムを加えて血漿の電解質組成に近づけたもの
・乳酸リンゲル液:リンゲル液に乳酸イオンを加えたもの
・酢酸リンゲル液:リンゲル液に酢酸イオンを加えたもの
などがあります。
生理食塩水は、細胞外液が低下した場合の補充や、薬剤投与における溶解や希釈の際に用いられます。
乳酸・酢酸リンゲル液は、手術中の輸液や、ショックなどによる循環血液量減少の際に用いられます。
細胞外液補充液は、体液喪失において使用されます。
体液喪失の例としては、激しい嘔吐や下痢などです。
嘔吐では胃液に含まれる水素イオンや塩化物イオンの喪失の喪失により、アルカローシス(PHがアルカリ性に傾いている状態)になるため、アルカリ成分を含まない生理食塩液が用いられます。
下痢では消化管液に含まれる重炭酸イオンが喪失するためアシドーシス(PHが酸性に傾いている状態)になるため、乳酸リンゲル液が用いられます。
1-4号液
1-4号液は、維持輸液とも呼ばれています。
体液と比較して電解質濃度が低い輸液で、細胞外液補充液と5%ブドウ糖液を混ぜ合わせたものです。
細胞外・内液両方に分布するのですが、分布割合によって1-4号に分けられています。
1号液(開始液)は、カリウムが含まれていないことが特徴です。
そのため、高カリウム血症が定かではない場合や、緊急時に腎機能などがすぐに把握できない場合に使用されます。
2号液(脱水補給液)は、カリウムやリンなどの、細胞内に多く存在する電解質が含まれています。
低カリウム血症や脱水(細胞内の電解質が不足する場合)に用いられます。
3号液(維持液)は、水分や電解質の1日に必要な量が含まれているものです。
経口摂取できない方や、なんらかの影響により摂食が進まない場合に用いられます。
注意点としては、カリウムを含むため腎機能低下がある場合への使用です。
4号液(術後回復液)は、電解質濃度が低く水分補給効果が大きいことが特徴です。
術後の輸液などに使用されます。
この記事へのコメントはありません。