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リスク管理のコツ
リスク管理を行うためには、対象者が罹患している疾患を把握し、まずは病態把握をすることが重要です。
病態把握には、血液データやフィジカルアセスメントが大切になりますが、何よりもまずは、解剖・運動・生理学等の基礎を理解していることで、病態理解が深まります。
薬剤においては、服用している薬剤がどのような作用があり、一方でどのような副作用があるか、またそこから予測されるリスクを考える事で、リスク管理につなげる事が可能です。
今回、リスク管理に役立つ睡眠薬の種類と使用時の注意点についてまとめていきたいと思います。
不眠症について
不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。
「1. 長期間にわたり夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、このふたつが認められたとき不眠症と診断されます。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
不眠症のタイプ
不眠症は4つのタイプがあります。
①入眠障害:寝つきが悪い
②中途覚醒:眠りが浅く途中で何度も目が覚める
③早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまう
④熟眠障害:ある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない
不眠症と睡眠衛生指導
不眠症治療では、治療の第一選択として「睡眠衛生指導」が行われます。
まずは、生活習慣の改善が必要になります。
・睡眠に影響する痛みの症状を緩和する
・睡眠に影響するステロイド等の薬の服用時間の考慮
・刺激物を避ける
・就寝前のリラックス方法を身につける
・眠くなってから布団に入る
・就寝時間にこだわらない
・毎日同じ時間に起きる
・目覚めとともに日光を浴びる
・規則正しい食事と運動
・昼寝は15時までに20-30分程度まで
・眠りが浅い場合は遅寝、早起き
・寝酒は不眠の元になる
このような指導による改善をまず目指し、それでも効果が乏しければ薬物療法という流れになります。
なお、睡眠薬使用は原則的に短期間での使用を目標とするので、あらかじめ服用をやめる時期を決めておく事が良いとされています。
睡眠薬の種類と使い分け
スポレキサント(ベルソムラ)
この薬は、オレキシン受容体という覚醒に関する受容体を遮断する作用があります。
常用量依存や耐性は少ないとされています。
薬物の効果は長めだとされており、上記不眠分類の「①」「②」のタイプに効果的だとされています。
レム睡眠(浅い眠り)を邪魔しないので、夢を見るような眠りとなりますが、悪夢が続く可能性があるとされています。
レンポレキサント(デエビゴ)
この薬は、オレキシン受容体という覚醒に関する受容体を遮断する作用があります。
スポレキサント(ベルソムラ)よりも相互作用が少ないとされており、他の薬剤と相互作用を起こしてしまう場合に用いられる事があります。
エスゾピクロン(ルネスタ)
この薬は、催眠や鎮静に関与するGABA-A受容体と結合し、脳の興奮を抑えるGABAの作用を強め、催眠を促します。
筋弛緩作用、抗不安作用は少ないとされています。
薬の作用は長めで、上記不眠分類の「①」「②」のタイプに効果的だとされています。
苦味を感じる場合がある事が特徴です。
ゾルピデム(マイスリー)
この薬は、催眠や鎮静に関与するGABA-A受容体と結合し、脳の興奮を抑えるGABAの作用を強め、催眠を促します。
薬の作用が短めで、上記不眠分類の「①」以外には効果が乏しい事が多いとされています。
ラメルテオン(ロゼレム)
この薬は、概日リズムに関するメラトニン受容体に作用して概日リズムを整え催眠を促します。
他の薬のように即効性を期待するものではなく、長期的に効果を確認する事が必要になります。
睡眠薬でないが催眠作用のある薬剤
睡眠薬でないが、催眠作用のある薬剤として、抗うつ薬や抗不安薬があります。
種類の違う睡眠薬を使用する事で催眠効果が強くなる事が期待されますが、その分副作用に注意する必要があります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬服用の注意点
基本は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を用いますが、効果が乏しい場合にはベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用します。
その際、ベンゾジアゼピン系睡眠薬における副作用に注意する必要があります。
・筋弛緩作用→転倒
・前向性健忘→服用後の記憶が保持できない
・薬の作用の持ち越し→翌日も注意が必要
・退薬症状、反跳性不眠→薬剤の急な中止により、さらに不眠が強くなる
上記のような副作用と、それに関連するリスクを把握しながら、対象者の状態把握に努める事が必要になります。
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